昨年3月に端を発するドーピング問題で、世界アンチドーピング機構(WADA)との示談により3カ月間(2025年2月9日~5月4日/練習は4月13日から再開)の出場停止処分にとどまった男子テニス世界ランク1位のヤニック・シナー(イタリア/23歳)。処分が明けるのは、次の四大大会「全仏オープン」はもちろん母国開催の前哨戦「イタリア国際」(ATP1000)にも間に合うタイミングとなった。
ただシモナ・ハレップ(ルーマニア/女子元1位)をはじめ過去にドーピング問題で非常に重いペナルティを受けてきた選手たちが多くいることから、今回の決定には各方面で批判や疑問の声が噴出している。PTPA(プロテニスプレーヤー協会)創設者のノバク・ジョコビッチ(セルビア/元1位/現7位)も「反ドーピングシステムが機能していないのは明らか」と苦言を呈していたほどだ。
一方で今回のケースがサポートメンバーの過失(禁止物質の入ったスプレーを塗った手でマッサージを施した)によるものと報じられていることから、シナーを擁護する人も数多くいる。四大大会のシングルスで20勝を誇るテニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラー(スイス/元1位/22年引退)の元コーチであるセベリン・リュティ氏(スイス/49歳)もその1人だ。
先日応じたイタリア系スイスメディア『Corriere del Ticino』のインタビューで、同氏は自身が長年指導したフェデラーが「キャリアを通じて薬の服用には細心の注意を払っていた」と振り返りつつ、「シナーのケースは(通常の)ドーピング違反とは全く無関係であると述べた人々の意見に私は同意する」と発言。
その上でシナーがドーピング違反発覚後に多くの批判を浴びながら、昨年の「全米オープン」や今年の「全豪オープン」などを制し、世界王者としての重圧を跳ね除けてきたことに触れ、23歳の若きヒーローを次のように称賛した。「私は精神的な面でシナーが2024年と25年の最初の数カ月をどのように乗り越えてきたかについて、彼を称えたい。彼は真のナンバーワンらしい振る舞いを見せたし、全ての敬意に値する選手だ」
一方でリュティ氏はシナーに対する処分の決定については「発言を控えたい」と慎重にコメント。「おそらく、ジョコビッチの言うことも一理あるだろう。彼はシナーのケースの扱い方について疑問や懸念を表明した。明確な規則が不足しているのだと思う。ただ、繰り返しにはなるが、この非常に繊細で難解な問題、特に軟膏や鎮痛剤の分野に関しては、深入りすることは避けたい」と締めくくった。
まだまだ収束しそうにないシナーのドーピング問題。今後も多くの有識者から様々な意見が出てくることだろう。
文●中村光佑
【画像】世界ランキング1位のシナーがズベレフをストレートで破り大会2連覇を達成!|全豪オープン2025男子シングルス決勝
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ただシモナ・ハレップ(ルーマニア/女子元1位)をはじめ過去にドーピング問題で非常に重いペナルティを受けてきた選手たちが多くいることから、今回の決定には各方面で批判や疑問の声が噴出している。PTPA(プロテニスプレーヤー協会)創設者のノバク・ジョコビッチ(セルビア/元1位/現7位)も「反ドーピングシステムが機能していないのは明らか」と苦言を呈していたほどだ。
一方で今回のケースがサポートメンバーの過失(禁止物質の入ったスプレーを塗った手でマッサージを施した)によるものと報じられていることから、シナーを擁護する人も数多くいる。四大大会のシングルスで20勝を誇るテニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラー(スイス/元1位/22年引退)の元コーチであるセベリン・リュティ氏(スイス/49歳)もその1人だ。
先日応じたイタリア系スイスメディア『Corriere del Ticino』のインタビューで、同氏は自身が長年指導したフェデラーが「キャリアを通じて薬の服用には細心の注意を払っていた」と振り返りつつ、「シナーのケースは(通常の)ドーピング違反とは全く無関係であると述べた人々の意見に私は同意する」と発言。
その上でシナーがドーピング違反発覚後に多くの批判を浴びながら、昨年の「全米オープン」や今年の「全豪オープン」などを制し、世界王者としての重圧を跳ね除けてきたことに触れ、23歳の若きヒーローを次のように称賛した。「私は精神的な面でシナーが2024年と25年の最初の数カ月をどのように乗り越えてきたかについて、彼を称えたい。彼は真のナンバーワンらしい振る舞いを見せたし、全ての敬意に値する選手だ」
一方でリュティ氏はシナーに対する処分の決定については「発言を控えたい」と慎重にコメント。「おそらく、ジョコビッチの言うことも一理あるだろう。彼はシナーのケースの扱い方について疑問や懸念を表明した。明確な規則が不足しているのだと思う。ただ、繰り返しにはなるが、この非常に繊細で難解な問題、特に軟膏や鎮痛剤の分野に関しては、深入りすることは避けたい」と締めくくった。
まだまだ収束しそうにないシナーのドーピング問題。今後も多くの有識者から様々な意見が出てくることだろう。
文●中村光佑
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