海外テニス

錦織圭も大絶賛!「30位くらいまでは余裕でいけそう」と確信させた綿貫陽介の快進撃<SMASH>

内田暁

2025.03.17

四大大会に次ぐグレードのATPマスターズ1000シリーズ「BNPパリバ・オープン」で、予選から勝ち上がりベスト16入りを果たした綿貫。(C)Getty Images

 カリフォルニア州南西部のインディアンウェルズと、フロリダ半島の先端の町マイアミで開催されるテニスツアーのATPマスターズ1000の2大会は、陽光に恵まれた開催地の特性から"サンシャイン・ダブル"と呼ばれている。

 そのインディアンウェルズ開催大会"BNPパリバ・オープン"で、綿貫陽介は自分の名を体現するかのように、ポジティブなオーラを全身から放ちながら、予選を突破しベスト16へと勝ち上がった。

 しかもその道程では、世界17位にして地元米国の人気選手、フランシス・ティアフォーから殊勲の星ももぎ取っている。本来ならアウェーの状況にもかかわらず、自身のミスをもユーモラスな所作で笑いに変え、ファンの声援を獲得した。とりわけ、チェンジオーバーの際に自らペプシを要求し、自陣に缶を示しながらコーチと交わした「飲んでいい?」「イケイケ!」のやり取りは、ソーシャルメディア等でも話題になる。しかもペプシを飲んだ後、ショットスピードも約5㎞/h上昇したとなれば、なおのこと。

 準々決勝のコートに入った時も、そして最終的にタロン・フリークスポールに6-7(4)、1-6で敗れコートを去る時も、ひときわ大きな歓声を背に浴びた。

「本当に、すごくチームのみんなとも素敵な時間を過ごせました」

 敗戦から、約1時間後。まだ穏やかな高揚感を頬に灯し、綿貫が言った。今大会では、かねてより「人柄も素晴らしそうだな」と敬意を寄せていたコーチのウェイン・フェレイラ氏が、2年越しの願いが叶ってチームに参画。ケガでの戦線離脱期も支えてくれたトレーナーの長田光生氏も、あらゆる面でサポートしてくれる。
 
 そんな安心感の中で、綿貫は「ウェインさんにもずっと言われていた」という"Stay Positive(ポジティブであれ)"のテーマを完遂。その結果がいかに自身のみならず、周囲にも変化を及ぼすかを、身をもって実感した。そうして向けられた温かな声と視線は、先達たちが時間をかけ、築いてきた信頼やイメージに根差していることも――。

「本当にティアフォーとの試合の時も、アウェーなはずなのにホームのようにプレーできた。昨日(4回戦前日)も、ホテルで練習していた時に、色んな人に声をかけてもらった。SNSで話題になったのもすごい驚きましたし、すごくなんだろう...日本じゃないのにこれだけ応援してもらえるのは、本当に日本人の特権というか、日本の色んな競技の選手たちが、海外や特にアメリカに渡って活躍してるおかげだなっていうのを、すごく感じました」

 日本人はマナーが良い、日本人は真面目で一生懸命――、そのようなイメージが浸透しているおかげで「日本であることのアドバンテージを感じた」と綿貫は言う。そしてその伝統を、自身も継承していかなくてはいけないとの、自覚を新たにしたとも。

「すごく好かれている印象もありますし、そういう先人たちが作った流れは、僕にとってありがたいと思います。やっぱりそれを、何だろうな...自分だけではなく、今は僕も日本人として海外に渡ってきてリプレゼン(代表)しているので、それはうまく続けていきたいなって思います」

 思えば昨年、綿貫はコートに立てない間の取り組みとして「人間性を磨く」ことを挙げていた。「テニスは人生観が反映されるスポーツ。長い試合中、良い瞬間も苦しい瞬間もあるなかで、戦い抜くには人間としての強さが必要」

 そう感じたからこそ、色んな分野の人々に会い、本を読み、映画を鑑賞し、国内の歴史ゆかりの地を訪ね、多くを考えたという。今回の躍進は、そのような日々の結実でもあった。
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錦織が綿貫の活躍に太鼓判!