テニス競技はメンタルによって大きく結果が左右されるスポーツです。しかし、メンタルを強化したいけれど「なんか大変そうだ」と敬遠している人はいないでしょうか。
本シリーズでは一般プレーヤーに向けて、伊達公子氏や浅越しのぶ氏といった日本テニス界をけん引したトップ選手の指導経験を持つメンタルアドバイザー椙棟紀男氏に、簡単に身に付くメンタルの強化方法を伝授してもらいます。
* * *
1976年に日本で発売された、T・ガルウェイ著『インナーゲーム』という本にこう書かれています。選手は、心の中(脳の中)でいつも自分自身と会話をしている。特に試合では、自分(セルフ1)が自身(セルフ2)に多くを語り掛けている。
プレー直前:「ミスするなよ」「ボールをよく見ろ!」「しっかり腕を振って」「一歩目を早く!」...。
プレー直後:「だから言ったじゃないか」「ヘタクソ!」「よしよしその調子」「勝てるかもしれないな」...。
直前は結果への心配や注意を喚起し、直後では𠮟咤激励をしているのですが、一体誰が誰に話し掛けているのでしょうか?
ガルウェイ氏は、𠮟責し支配しようとしている声の主をセルフ1(自分)、その命令に従ってプレーをしている存在をセルフ2(自身)と定義しています。
多くのプレーヤーは、セルフ1が命令し励まさないと、セルフ2は任務をやり通すことができないと錯覚している。特に結果を気にするとセルフ1は口を出します。
逆に、セルフ1の口数が少なければ少ないほど実際のプレーは良くなってきます。皆さんは次のような経験をしたことがありませんか?
「ミスしたくない」とか大事なポイントで「決めよう」と思うと緊張感で思わず力が入ってしまう。また、逆にせっかくリードしているのにセルフ1の「勝てるかも...」の囁きで失敗してしまう、などなど。
これらは、セルフ1がセルフ2を信頼していないことで起こるのです。ではどうすればいいのか?
セルフ1の仕事とは、ボールが落ちた瞬間を「バウンド」。ラケットに当たった瞬間を「ヒット」とセルフ2にしっかり情報を伝えればいいのです。一方セルフ2の仕事は、筋肉そのものではなく、本能の集積体であるので、練習で積み上げた感覚を実際のプレーで表現するだけでいいのです。
セルフ1とセルフ2の関係は、敵にもなり強力な味方にもなります。“2人の自分”の理想的な協調関係が、良いパフォーマンスにつながります。
構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2023年9月号から抜粋・再編集
【画像】強靭なメンタルを持つトッププロたちの練習の様子
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1976年に日本で発売された、T・ガルウェイ著『インナーゲーム』という本にこう書かれています。選手は、心の中(脳の中)でいつも自分自身と会話をしている。特に試合では、自分(セルフ1)が自身(セルフ2)に多くを語り掛けている。
プレー直前:「ミスするなよ」「ボールをよく見ろ!」「しっかり腕を振って」「一歩目を早く!」...。
プレー直後:「だから言ったじゃないか」「ヘタクソ!」「よしよしその調子」「勝てるかもしれないな」...。
直前は結果への心配や注意を喚起し、直後では𠮟咤激励をしているのですが、一体誰が誰に話し掛けているのでしょうか?
ガルウェイ氏は、𠮟責し支配しようとしている声の主をセルフ1(自分)、その命令に従ってプレーをしている存在をセルフ2(自身)と定義しています。
多くのプレーヤーは、セルフ1が命令し励まさないと、セルフ2は任務をやり通すことができないと錯覚している。特に結果を気にするとセルフ1は口を出します。
逆に、セルフ1の口数が少なければ少ないほど実際のプレーは良くなってきます。皆さんは次のような経験をしたことがありませんか?
「ミスしたくない」とか大事なポイントで「決めよう」と思うと緊張感で思わず力が入ってしまう。また、逆にせっかくリードしているのにセルフ1の「勝てるかも...」の囁きで失敗してしまう、などなど。
これらは、セルフ1がセルフ2を信頼していないことで起こるのです。ではどうすればいいのか?
セルフ1の仕事とは、ボールが落ちた瞬間を「バウンド」。ラケットに当たった瞬間を「ヒット」とセルフ2にしっかり情報を伝えればいいのです。一方セルフ2の仕事は、筋肉そのものではなく、本能の集積体であるので、練習で積み上げた感覚を実際のプレーで表現するだけでいいのです。
セルフ1とセルフ2の関係は、敵にもなり強力な味方にもなります。“2人の自分”の理想的な協調関係が、良いパフォーマンスにつながります。
構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2023年9月号から抜粋・再編集
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