このテーマが物議をかもすのは、もはや初夏のパリの恒例行事になりつつある。
5月末から6月上旬にかけて開催されるテニス四大大会「全仏オープン」に、“ナイトセッション”が設けられたのは、まだコロナ過も開けぬ2021年のことだった。試合開始時刻は午後8時過ぎに設定され、会場最大のコート、フィリップシャトリエに1試合のみ組まれる。チケットも別売り。そしてフランス国内の放映権は『アマゾンプライム』が独占する。
「日中は仕事している人たちが、観戦しやすいように」
それが、大会側が打ち出す “ナイトセッションの理念”だ。
テニスの人気向上を目的とし、ビジネス面でも合理性があるように見える、ナイトセッション。ではその新フォーマットが、なぜ毎年批判にさらされているかというと、それは、組まれる試合の男女比が、あまりに極端に偏っているからである。
この傾向は、“元年”である2021年大会時から顕著ではあった。この年のナイトセッションは全10試合で、そのうち女子は2試合のみ。ただ、観客動員に規制が掛かっていたこともあり、そこまで話題にはならなかった。
問題視されるようになったのは、翌年。2022年は10試合のうち、女子は1試合に留まった。大会ディレクターの会見で、この件を指摘された元女子世界1位のアメリー・モーレスモは、「男子の方が“魅力的なカードが多い”から」と発言。この会見の様子がメディアに乗ると、多くの女子選手からも反発の声が上がった。するとモーレスモは自ら、主要メディアのジャーナリスト数名に声を掛け、「正しく意図が伝わらなかった」と釈明。「来年以降は改善していきたい」と話した。
果たして、翌2023年。結果から言えば、10試合中、女子は一つ。さらに続く2024年は、ナイトセッションの数は11に増えたが、女子は1試合も組まれなかったのだ。この年の会見でモーレスモは集中砲火を浴びるが、「スケジュールは私の一存では決められない。諸般の事情が絡み合うので難しい」と言うに留まった。
そして今年……。フランステニス連盟(FFT)のジル・モレットン会長が、「観客には“より良い試合”を提供しなくてはいけない」と発言し、物議をかもす。さらに大会が進んでも、女子のナイトセッションが組まれる気配はない。大会中盤に会見を開いたモーレスモは、またも集中砲火を浴びる。そして今年、彼女が強調したのは「女子の試合は、一瞬で終わってしまう危険性がある」という点だった。
「問題は、試合時間の長さです。女子の試合は2セットで終わるかもしれない。男子は最短で3セットなので、時間として2時間半くらいは計算できる。けっして女子の試合レベルが、男子に劣ると言っている訳ではありません」
また、更新された『アマゾンプライム』との契約も「ナイトセッションは1試合のみ」と定められていることを明かした上で、次のようにも説明した。
「フランスでは、仕事が終えた人たちがここに来られるのは、夜の7~8時頃。だから8時過ぎにナイトセッションを始めるのがベストなんです。そこから2試合入れたら、終わるのが遅くなりすぎる。だからといって早く始めたら、1試合目は空席が目立つでしょう。いろんなことを加味してこのスケジュールを組んでいるんです」
結局はモーレスモの口から、現状を変える具体的な策や意向は聞けないまま、会見は終わった。
5月末から6月上旬にかけて開催されるテニス四大大会「全仏オープン」に、“ナイトセッション”が設けられたのは、まだコロナ過も開けぬ2021年のことだった。試合開始時刻は午後8時過ぎに設定され、会場最大のコート、フィリップシャトリエに1試合のみ組まれる。チケットも別売り。そしてフランス国内の放映権は『アマゾンプライム』が独占する。
「日中は仕事している人たちが、観戦しやすいように」
それが、大会側が打ち出す “ナイトセッションの理念”だ。
テニスの人気向上を目的とし、ビジネス面でも合理性があるように見える、ナイトセッション。ではその新フォーマットが、なぜ毎年批判にさらされているかというと、それは、組まれる試合の男女比が、あまりに極端に偏っているからである。
この傾向は、“元年”である2021年大会時から顕著ではあった。この年のナイトセッションは全10試合で、そのうち女子は2試合のみ。ただ、観客動員に規制が掛かっていたこともあり、そこまで話題にはならなかった。
問題視されるようになったのは、翌年。2022年は10試合のうち、女子は1試合に留まった。大会ディレクターの会見で、この件を指摘された元女子世界1位のアメリー・モーレスモは、「男子の方が“魅力的なカードが多い”から」と発言。この会見の様子がメディアに乗ると、多くの女子選手からも反発の声が上がった。するとモーレスモは自ら、主要メディアのジャーナリスト数名に声を掛け、「正しく意図が伝わらなかった」と釈明。「来年以降は改善していきたい」と話した。
果たして、翌2023年。結果から言えば、10試合中、女子は一つ。さらに続く2024年は、ナイトセッションの数は11に増えたが、女子は1試合も組まれなかったのだ。この年の会見でモーレスモは集中砲火を浴びるが、「スケジュールは私の一存では決められない。諸般の事情が絡み合うので難しい」と言うに留まった。
そして今年……。フランステニス連盟(FFT)のジル・モレットン会長が、「観客には“より良い試合”を提供しなくてはいけない」と発言し、物議をかもす。さらに大会が進んでも、女子のナイトセッションが組まれる気配はない。大会中盤に会見を開いたモーレスモは、またも集中砲火を浴びる。そして今年、彼女が強調したのは「女子の試合は、一瞬で終わってしまう危険性がある」という点だった。
「問題は、試合時間の長さです。女子の試合は2セットで終わるかもしれない。男子は最短で3セットなので、時間として2時間半くらいは計算できる。けっして女子の試合レベルが、男子に劣ると言っている訳ではありません」
また、更新された『アマゾンプライム』との契約も「ナイトセッションは1試合のみ」と定められていることを明かした上で、次のようにも説明した。
「フランスでは、仕事が終えた人たちがここに来られるのは、夜の7~8時頃。だから8時過ぎにナイトセッションを始めるのがベストなんです。そこから2試合入れたら、終わるのが遅くなりすぎる。だからといって早く始めたら、1試合目は空席が目立つでしょう。いろんなことを加味してこのスケジュールを組んでいるんです」
結局はモーレスモの口から、現状を変える具体的な策や意向は聞けないまま、会見は終わった。