専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

不振の穂積絵莉を全仏4強に導いた新たな師の助言。「自分を褒める言葉をノートに書く」ことで心が前向きに<SMASH>

内田暁

2025.06.08

穂積絵莉(左)は以前にも組んだアイケリ(右)とのペアをこの春から復活し、成績が上向きに。その陰には新コーチの神尾米氏の存在があった(※写真はイタリア国際)。(C)Getty Images

穂積絵莉(左)は以前にも組んだアイケリ(右)とのペアをこの春から復活し、成績が上向きに。その陰には新コーチの神尾米氏の存在があった(※写真はイタリア国際)。(C)Getty Images

 初戦のコートに向かう時、ずっと付けていたネックレスのチェーンが、切れた。

「結構、“ラック”とかを信じる方」という穂積絵莉は、その時、こう思ったという。

「あっ、これはもしかしたら、良いことがあるかもしれないな」

 今季はここまで、苦しい戦いが続いていた。特に2~4月にかけては、7大会に出場して勝利は2つ。

「その悪いものを、ネックレスが全部引き受けてくれたんじゃないか? それで壊れたんだと思ったら、良いことあるかもって」
 
 ゲンを担ぐ人ならば、不吉と受け止めそうな現象。ましてや舞台は、テニス四大大会の「全仏オープン」初戦である。それにもかかわらず“吉兆”と直感したところに、既に穂積の変化があった。

「“人間・穂積絵莉”の自己肯定感は高いんですが、テニス選手としては低くて」

 それが穂積の、自己評価。どんなに必死に練習しても、「まだ足りないのでは?」と不安になることが多いという。周囲から掛けられる「絵莉ならもっとできるよ!」の激励も、「自分の力を出し切れていないということかな」と、やや後ろ向きに受け止めていた。
 
 そんな心持ちに新たな視座を与えてくれたのは、新たな“師”。この2月中旬から、穂積は世界ランク元シングルス24位、ダブルス65位の神尾米氏が立ち上げた“Team Rise”を拠点とした。コーチが海外遠征に帯同できない時も、密にコミュニケーションは重ねたという。その中で神尾氏に掛けられた言葉が、「もっと自分を認めてあげたら?」だった。

「ヨネさんとコミュニケーションを取る中で、『1日の練習をしっかり100%でやり切ったら、それを自分がちゃんと認めることが大事だよ』って言われたんです」

 その師の助言を実践するため、穂積は「1日の最後に、自分を褒める言葉をノートに書くようにした」。日々の取り組みを文字で可視化し、客観的に見る。その積み重ねで、肯定感が自身の内に定着し始めた。

 クレーコートシーズンに入り、2年前にも組んだウリケ・アイケリ(ノルウェー)をパートナーにした頃から、プレーも結果も徐々に上向きになる。切れたネックレスに「ラック」を感じたのは、そんな折だった。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号

  • soccer_digest

    6月10日(火)発売!

    定価:800円 (税込)
  • world_soccer_digest

    2025年6月19日(木)発売!

    定価:980円 (税込)
  • smash

    6/20(金)発売!

    定価:800円 (税込)
  • dunkshot

    好評発売中!

    定価:1100円 (税込)
  • slugger

    5月23日(金)発売!

    定価:1100円 (税込)