初戦のコートに向かう時、ずっと付けていたネックレスのチェーンが、切れた。
「結構、“ラック”とかを信じる方」という穂積絵莉は、その時、こう思ったという。
「あっ、これはもしかしたら、良いことがあるかもしれないな」
今季はここまで、苦しい戦いが続いていた。特に2~4月にかけては、7大会に出場して勝利は2つ。
「その悪いものを、ネックレスが全部引き受けてくれたんじゃないか? それで壊れたんだと思ったら、良いことあるかもって」
ゲンを担ぐ人ならば、不吉と受け止めそうな現象。ましてや舞台は、テニス四大大会の「全仏オープン」初戦である。それにもかかわらず“吉兆”と直感したところに、既に穂積の変化があった。
「“人間・穂積絵莉”の自己肯定感は高いんですが、テニス選手としては低くて」
それが穂積の、自己評価。どんなに必死に練習しても、「まだ足りないのでは?」と不安になることが多いという。周囲から掛けられる「絵莉ならもっとできるよ!」の激励も、「自分の力を出し切れていないということかな」と、やや後ろ向きに受け止めていた。
そんな心持ちに新たな視座を与えてくれたのは、新たな“師”。この2月中旬から、穂積は世界ランク元シングルス24位、ダブルス65位の神尾米氏が立ち上げた“Team Rise”を拠点とした。コーチが海外遠征に帯同できない時も、密にコミュニケーションは重ねたという。その中で神尾氏に掛けられた言葉が、「もっと自分を認めてあげたら?」だった。
「ヨネさんとコミュニケーションを取る中で、『1日の練習をしっかり100%でやり切ったら、それを自分がちゃんと認めることが大事だよ』って言われたんです」
その師の助言を実践するため、穂積は「1日の最後に、自分を褒める言葉をノートに書くようにした」。日々の取り組みを文字で可視化し、客観的に見る。その積み重ねで、肯定感が自身の内に定着し始めた。
クレーコートシーズンに入り、2年前にも組んだウリケ・アイケリ(ノルウェー)をパートナーにした頃から、プレーも結果も徐々に上向きになる。切れたネックレスに「ラック」を感じたのは、そんな折だった。
「結構、“ラック”とかを信じる方」という穂積絵莉は、その時、こう思ったという。
「あっ、これはもしかしたら、良いことがあるかもしれないな」
今季はここまで、苦しい戦いが続いていた。特に2~4月にかけては、7大会に出場して勝利は2つ。
「その悪いものを、ネックレスが全部引き受けてくれたんじゃないか? それで壊れたんだと思ったら、良いことあるかもって」
ゲンを担ぐ人ならば、不吉と受け止めそうな現象。ましてや舞台は、テニス四大大会の「全仏オープン」初戦である。それにもかかわらず“吉兆”と直感したところに、既に穂積の変化があった。
「“人間・穂積絵莉”の自己肯定感は高いんですが、テニス選手としては低くて」
それが穂積の、自己評価。どんなに必死に練習しても、「まだ足りないのでは?」と不安になることが多いという。周囲から掛けられる「絵莉ならもっとできるよ!」の激励も、「自分の力を出し切れていないということかな」と、やや後ろ向きに受け止めていた。
そんな心持ちに新たな視座を与えてくれたのは、新たな“師”。この2月中旬から、穂積は世界ランク元シングルス24位、ダブルス65位の神尾米氏が立ち上げた“Team Rise”を拠点とした。コーチが海外遠征に帯同できない時も、密にコミュニケーションは重ねたという。その中で神尾氏に掛けられた言葉が、「もっと自分を認めてあげたら?」だった。
「ヨネさんとコミュニケーションを取る中で、『1日の練習をしっかり100%でやり切ったら、それを自分がちゃんと認めることが大事だよ』って言われたんです」
その師の助言を実践するため、穂積は「1日の最後に、自分を褒める言葉をノートに書くようにした」。日々の取り組みを文字で可視化し、客観的に見る。その積み重ねで、肯定感が自身の内に定着し始めた。
クレーコートシーズンに入り、2年前にも組んだウリケ・アイケリ(ノルウェー)をパートナーにした頃から、プレーも結果も徐々に上向きになる。切れたネックレスに「ラック」を感じたのは、そんな折だった。