花の都パリのレッドクレーで繰り広げられた2人の若獅子による激闘。その様子を目にしたレジェンド、ロジャー・フェデラー氏(スイス)は、「今日パリには3人の勝者がいる。アルカラス、シナー、そしてこの美しいテニスの試合だ。なんという試合だ!」と大絶賛した。多くの人々を熱狂の渦に巻き込んだ今年の「全仏オープン男子シングルス決勝」を、現地取材したテニスライター内田暁さんのリポートで今一度振り返ってみた。
◆ ◆ ◆
新たな歴史が作られた――。
そのような文言を軽々に言うべきではないが、それでもこの試合を目撃した人々の多くは、歴史的瞬間に立ち合えた幸運に、身を震わせていたはずだ。
事実、5時間29分に至ったこの試合は、“全仏オープン(ローランギャロス)史上最長の決勝戦”として大会史に刻まれる。
優勝会見ではいの一番に、「1980年ウインブルドン決勝のジョン・マッケンロー対ビヨン・ボルグや、2008年のロジャー・フェデラー対ラファエル・ナダルの試合と並ぶ歴史的一戦になるだろう」との見解を記者が伝えた。
カルロス・アルカラス(スペイン/世界ランキング2位)は、見慣れた天真爛漫な笑顔で言う。
「伝説的な試合と比べられるなんて、とてつもなく光栄なこと。僕自身では比較は難しいから、皆さんの判断に委ねるよ」
2025年全仏オープン決勝戦は、第1シードで23歳のヤニック・シナー(イタリア/同1位)と、第2シードで22歳のアルカラスという、頂上決戦に相応しいカードが実現。これまで11度の対戦を重ねてきた若き両雄だが、グランドスラム(四大大会)の決勝で顔を合わせるのは、これが初めてのことだった。
今年のローランギャロスは、この地で14度トロフィーを抱いた、ラファエル・ナダルの“引退セレモニー”で幕を開けた。15,000人の大観衆も見守るセレモニーは、ナダルの功績を称えるプレートの “除土式”によって掉尾を飾る。センターコート“フィリップシャトリエ”の一角を掃くと、赤土の下から姿を現す、ナダルの“足跡”。
「まさか永遠に、このコートに残るものが作られるとは思わなかった」
そう言いナダルは、目元を拭った。
それから、12日後――。自身の準決勝の試合を控え、センターコートで練習をしたアルカラスは、自分のスマートフォンでプレートの写真を撮っていた。
「ラファエル・ナダルの一部が宿るフィリップシャトリエでプレーすることで、僕にとってとても刺激的なこと」
決勝進出を決めたアルカラスは、憧れの人への敬意を、まっすぐに口にした。
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新たな歴史が作られた――。
そのような文言を軽々に言うべきではないが、それでもこの試合を目撃した人々の多くは、歴史的瞬間に立ち合えた幸運に、身を震わせていたはずだ。
事実、5時間29分に至ったこの試合は、“全仏オープン(ローランギャロス)史上最長の決勝戦”として大会史に刻まれる。
優勝会見ではいの一番に、「1980年ウインブルドン決勝のジョン・マッケンロー対ビヨン・ボルグや、2008年のロジャー・フェデラー対ラファエル・ナダルの試合と並ぶ歴史的一戦になるだろう」との見解を記者が伝えた。
カルロス・アルカラス(スペイン/世界ランキング2位)は、見慣れた天真爛漫な笑顔で言う。
「伝説的な試合と比べられるなんて、とてつもなく光栄なこと。僕自身では比較は難しいから、皆さんの判断に委ねるよ」
2025年全仏オープン決勝戦は、第1シードで23歳のヤニック・シナー(イタリア/同1位)と、第2シードで22歳のアルカラスという、頂上決戦に相応しいカードが実現。これまで11度の対戦を重ねてきた若き両雄だが、グランドスラム(四大大会)の決勝で顔を合わせるのは、これが初めてのことだった。
今年のローランギャロスは、この地で14度トロフィーを抱いた、ラファエル・ナダルの“引退セレモニー”で幕を開けた。15,000人の大観衆も見守るセレモニーは、ナダルの功績を称えるプレートの “除土式”によって掉尾を飾る。センターコート“フィリップシャトリエ”の一角を掃くと、赤土の下から姿を現す、ナダルの“足跡”。
「まさか永遠に、このコートに残るものが作られるとは思わなかった」
そう言いナダルは、目元を拭った。
それから、12日後――。自身の準決勝の試合を控え、センターコートで練習をしたアルカラスは、自分のスマートフォンでプレートの写真を撮っていた。
「ラファエル・ナダルの一部が宿るフィリップシャトリエでプレーすることで、僕にとってとても刺激的なこと」
決勝進出を決めたアルカラスは、憧れの人への敬意を、まっすぐに口にした。