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海外テニス

フェデラーも大絶賛した歴史的名勝負、5時間29分に及んだ「全仏オープン男子決勝」を振り返る<SMASH>

内田暁

2025.06.15

不屈のファイティングスピリットを示した勝者アルカラス(右)と5時間半の激闘を戦い抜いた世界王者シナー(左)。表彰式では両者を称えるべくフィリップシャトリエは万雷の拍手に包まれた。(C)Getty Images

不屈のファイティングスピリットを示した勝者アルカラス(右)と5時間半の激闘を戦い抜いた世界王者シナー(左)。表彰式では両者を称えるべくフィリップシャトリエは万雷の拍手に包まれた。(C)Getty Images

 追い上げる時のアルカラスは、それまでの自分を超えていく。

 2年前のウインブルドン決勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)戦も、そうだった。昨年の全仏オープン準決勝のシナー戦も、そして決勝戦のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)戦も、セットカウント1-2からの逆転劇だ。

 あどけない笑顔のためか、シナーやズベレフに比べれば小柄なためか、アルカラスには、巨人ゴリアテに立ち向かうダビデのような、ヒロイックな輝きがある。技と頭脳を総動員し、身を削ってでもウイナーを奪いに行く勇猛さは、観る者の胸を熱くする。スタジアムを揺るがす「カルロス! カルロス!」の大合唱は、さながら英雄を呼ぶ声だ。

「観衆の存在が、ものすごく大切な試合だった。彼らの助けなしに、逆転することは不可能だった」

 後に彼は、観客への感謝の言葉を幾度も口にした。

 第4セットを逆転で奪ったアルカラスは、第5セットの最初のゲームで、21本の激しいラリー戦を制しブレーク。このまま勝利まで疾走するかに思われたが、まだ、終わらない。ゲームカウント5-3で迎えたアルカラスの“優勝へのサービスゲーム”を、今度はシナーがブレークする。試合の最終盤に向け、両雄は疲労を見せるどころか、冴え冴えとした鍔迫り合いを繰り広げる。
 

 アルカラスの精緻なドロップショットを、シナーがラケットに先に引っ掛けるようにすくい上げ、ネット際に沈めてみせた。シナーのパッシングショットを、アルカラスが背走ぎみにバックで切り返しウイナーにする。試合時間が5時間を超え、この日最高のパフォーマンスを見せる両雄に、スタンドは文字通り、震えた。

 試合開始から、5時間29分。アルカラスのパッシングショットがシナーの脇を抜け、ライン際を抉った瞬間、勝者はその場に大の字に倒れ込む。両手で顔を覆い起き上がるチャンピオンの下に、シナーはネットを超えて歩みより、抱擁で互いの健闘をたたえた。

 死闘の直後に行なわれるセレモニーでは、トロフィーの授与に続き、アルカラスの母国スペインの国旗掲揚が行なわれた。

 かつては本物の国旗が掲げられたが、5年前のセンターコート改修の際にフラッグポールは姿を消し、今は巨大モニターにたなびく国旗の映像が映し出されるのみ。ただ、開閉式屋根やLEDモニターのテクノロジーが導入されても、演出の妙か受け継がれる精神性のためか、この地に宿る伝統と正統性が途切れることはない。

 表彰式で国家が流れるグランドスラムは、ローランギャロスだけである。ナダルが、この地で14度流したその曲を、アルカラスが再びスタジアムに響かせた。

現地取材・文●内田暁
構成●スマッシュ編集部

【画像】5時間29分に及ぶ死闘!アルカラス崖っぷちから大逆転優勝!シナーとの激闘を厳選ショットで特集

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