今季3大会目のグランドスラムであるウインブルドンの予選が、6月23日に開幕。初日は男子シングルス予選1回戦が行なわれ、日本勢ではダニエル太郎、内山靖崇、島袋将、綿貫陽介、トゥロター・ジェームズ、望月慎太郎の6選手が勝利した。
150年に迫る歴史を誇り、今もテニスの伝統を残すことから"聖地"と呼ばれるウインブルドン選手権。ただその予選会場は、本戦とは異なる場所で行なわれる。
予選会場の『コミュニティスポーツセンター』は、普段は平地が広がる芝のフィールド。そこにラインを引き、ネットを張り、仮設スタンドや選手ラウンジ用のテント等を設営して、予選が行なわれる。"聖地"への敷居は高く、道は遠い。「はるかなるウインブルドン」と憧憬を込め呼ばれる理由も、ここにあるのだろう。
現在32歳のダニエルと内山は、いずれも元トップ100ランカー。ウインブルドン本戦にも、複数回出場している。そんな二人は、今もそれぞれが新鮮な情熱とモチベーションを胸に、予選のコートで戦っていた。
「今は、トップ100と、それ以外のレベルの差がほとんどない。なので、本戦でも予選からでも、どちらでもいいという気持ちになっています」
そう語るのは、ダニエル太郎。10年ほど前のテニス界では、トップ100と200位前後ではテニスの質も異なったため、トップ100が一つの目標や指標たりえた。だが今は選手の層が各段に厚くなり、100位に明確なラインは存在しない。
「なので今はある意味、190位から30位にも行けるという感じがある」
だからこそランキングという数字ではなく、実体としての現代テニスに適応していきたいのだと、ダニエルは言った。
その意味でも芝のサーフェスは、今の自分に合っていると感じてもいるという。ダニエルといえば、かつては長いラリーを好み、クレーコートで強い印象が強かった。
「でも今の若手たちは、攻撃力が高い上に、弱点が少ない」とダニエル。
「昔なら、クレーだったら走って打ち返していれば勝てたところもあったが、今は遅いコートで全然ウイナーが取れない。逆に今は、芝の方がサーブでポイント取れたり、スライスが効果的だったりするので、以前とは勝てるサーフェスが逆になっている。だから、そこも面白いですよね」
世界のテニスの変容や自身の年齢に伴い、得意と感じるコートも変わる。その深みに、ダニエルは新たな楽しみを覚えているという。
偶然か必然か、このダニエルと似た想いを口にしたのが、内山だ。
「以前の僕は、芝が一番苦手だった。実際に2019年以前は、芝でほとんど勝ててなかったんですよ」
今回の初戦勝利後に、内山が笑顔で明かす。
「でも2019年に、ここの予選を突破した時から、芝でのプレーがわかってきた。以前は、芝ではサーブキープが何より大切で、1回ブレークすれば勝てるという考え方をしていたんです」
「でも2019年に、リターンでブロックやチップを使うなど工夫して、リターンから試合を作るようにしたら勝てるようになって。そこからは、芝が一番好きなサーフェスになりました」
さらに今季は例年とはスケジュールを変え、芝の前哨戦2大会にも出場。練習期間も含め、「芝でやりたいと思っていたプレーができ始めている」という。
グランドスラム本戦の荘厳さも予選の厳しさも、いずれも知り尽くしたダニエルと内山。その二人が、異なる武器やモチベーションを有し、再びかつて立った聖地を目指す。
現地取材・文●内田暁
【画像】ウインブルドン2024で存在感を放った男子トップ選手の厳選ショット!
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150年に迫る歴史を誇り、今もテニスの伝統を残すことから"聖地"と呼ばれるウインブルドン選手権。ただその予選会場は、本戦とは異なる場所で行なわれる。
予選会場の『コミュニティスポーツセンター』は、普段は平地が広がる芝のフィールド。そこにラインを引き、ネットを張り、仮設スタンドや選手ラウンジ用のテント等を設営して、予選が行なわれる。"聖地"への敷居は高く、道は遠い。「はるかなるウインブルドン」と憧憬を込め呼ばれる理由も、ここにあるのだろう。
現在32歳のダニエルと内山は、いずれも元トップ100ランカー。ウインブルドン本戦にも、複数回出場している。そんな二人は、今もそれぞれが新鮮な情熱とモチベーションを胸に、予選のコートで戦っていた。
「今は、トップ100と、それ以外のレベルの差がほとんどない。なので、本戦でも予選からでも、どちらでもいいという気持ちになっています」
そう語るのは、ダニエル太郎。10年ほど前のテニス界では、トップ100と200位前後ではテニスの質も異なったため、トップ100が一つの目標や指標たりえた。だが今は選手の層が各段に厚くなり、100位に明確なラインは存在しない。
「なので今はある意味、190位から30位にも行けるという感じがある」
だからこそランキングという数字ではなく、実体としての現代テニスに適応していきたいのだと、ダニエルは言った。
その意味でも芝のサーフェスは、今の自分に合っていると感じてもいるという。ダニエルといえば、かつては長いラリーを好み、クレーコートで強い印象が強かった。
「でも今の若手たちは、攻撃力が高い上に、弱点が少ない」とダニエル。
「昔なら、クレーだったら走って打ち返していれば勝てたところもあったが、今は遅いコートで全然ウイナーが取れない。逆に今は、芝の方がサーブでポイント取れたり、スライスが効果的だったりするので、以前とは勝てるサーフェスが逆になっている。だから、そこも面白いですよね」
世界のテニスの変容や自身の年齢に伴い、得意と感じるコートも変わる。その深みに、ダニエルは新たな楽しみを覚えているという。
偶然か必然か、このダニエルと似た想いを口にしたのが、内山だ。
「以前の僕は、芝が一番苦手だった。実際に2019年以前は、芝でほとんど勝ててなかったんですよ」
今回の初戦勝利後に、内山が笑顔で明かす。
「でも2019年に、ここの予選を突破した時から、芝でのプレーがわかってきた。以前は、芝ではサーブキープが何より大切で、1回ブレークすれば勝てるという考え方をしていたんです」
「でも2019年に、リターンでブロックやチップを使うなど工夫して、リターンから試合を作るようにしたら勝てるようになって。そこからは、芝が一番好きなサーフェスになりました」
さらに今季は例年とはスケジュールを変え、芝の前哨戦2大会にも出場。練習期間も含め、「芝でやりたいと思っていたプレーができ始めている」という。
グランドスラム本戦の荘厳さも予選の厳しさも、いずれも知り尽くしたダニエルと内山。その二人が、異なる武器やモチベーションを有し、再びかつて立った聖地を目指す。
現地取材・文●内田暁
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