こんなクラシカルなテニスが、パワー全盛期と呼ばれるこの時代に、まだ存在しえたのか――?
“聖地”とあがめられるウインブルドン18番コートの観客たちは、恐らくはそんなうれしい驚きに、胸を躍らせていたはずだ。しかもその体現者が、日本から来た22歳の若者と知れば、思いは一層新鮮だっただろう。
同時に、望月慎太郎(世界ランキング144位)が6年前にここウインブルドンのジュニア部門で、トロフィーを掲げたことを知る人ならば、目の前の光景に合点がいったかもしれない。
第1セットの衝撃は、とりわけ大きかった。試合開始前、身長198㎝の屈強なカレン・ハチャノフ(ロシア/同20位)の隣に立つ175㎝の小柄な青年の姿を見た者の多くは、パワーで圧倒される立ち上がりを予想しただろう。ところが試合開始早々から、成す術なく呆然と立ち尽くしたのは、元世界8位の今大会第17シードだ。
唸り声とボールが破裂するような打音を轟かせ放つハチャノフのサービスは、耳にも目にも迫力満点。ところがその剛球が、望月のラケットに触れるや時に威力を完全に失い、時に威力を倍増して、次々にハチャノフのコートへと散りばめられる。
ハチャノフが必死に対応しボールに追いつこうとも、その時には既に望月は、音もなくネットに現れボレーを決める。しかもラケットに触れるその瞬間まで、どこにボレーが打たれるかは予測不能。大胆にして繊細、流麗にして神出鬼没な望月のプレーに、観客はもちろん、通路に立つ警備員までもが「オオッ!」と感嘆の声をあげた。
第1セットは、6-1で望月。ハチャノフのエースはゼロどころか、望月の読みが外れた場面は皆無と言えるほどだった。
観客を沸かせた望月の変幻自在のテニスは、ハチャノフの心をかき乱す。実際に彼は、望月のプレーを「コート上にウイルスを撒き散らすよう」との独特の形容で、いかに自身のプレーが浸食されたかを言い表した。
「コーチから、彼はネットに出てくるのが好きだとは聞いていた。ただ、あそこまでとは思わなかった。正確な数字は見ていないが、100回くらいは来たんじゃないかな?」
試合後のハチャノフが、苦笑しながらこぼす。実際にこの試合、望月がネットに出たのは90回。ハチャノフの体感は、かなりの部分で正しかった。
この日が過去数日に比べて寒く、ボールが飛びにくかったことも、ハチャノフが挙げた苦戦の要因だ。
「それもあり、どうやって彼を抜けば良いのか見当がつかなかった。ボールを入れに行けば、決められる。リスクをとったら、ミスになる」
途方に暮れたまま、第1セットは終わったという。
ただそこは、シングルス最高8位に達した、海千山千の29歳である。
「球速を少し落としてみたり、サーブも色々と模索した。大切なのは球速ではなく、コースだと思った」
試行錯誤を重ねるハチャノフが、第2セットはタイブレークの末に取り返す。だが第3セットは、再び望月がリターンとネットプレーに凄まじい冴えを見せ、6-4で奪取した。流れも、そしてファンの心も、望月の手中にある。唯一の懸念事項は、予選を含め既に4試合戦ってきた体力面だ。
“聖地”とあがめられるウインブルドン18番コートの観客たちは、恐らくはそんなうれしい驚きに、胸を躍らせていたはずだ。しかもその体現者が、日本から来た22歳の若者と知れば、思いは一層新鮮だっただろう。
同時に、望月慎太郎(世界ランキング144位)が6年前にここウインブルドンのジュニア部門で、トロフィーを掲げたことを知る人ならば、目の前の光景に合点がいったかもしれない。
第1セットの衝撃は、とりわけ大きかった。試合開始前、身長198㎝の屈強なカレン・ハチャノフ(ロシア/同20位)の隣に立つ175㎝の小柄な青年の姿を見た者の多くは、パワーで圧倒される立ち上がりを予想しただろう。ところが試合開始早々から、成す術なく呆然と立ち尽くしたのは、元世界8位の今大会第17シードだ。
唸り声とボールが破裂するような打音を轟かせ放つハチャノフのサービスは、耳にも目にも迫力満点。ところがその剛球が、望月のラケットに触れるや時に威力を完全に失い、時に威力を倍増して、次々にハチャノフのコートへと散りばめられる。
ハチャノフが必死に対応しボールに追いつこうとも、その時には既に望月は、音もなくネットに現れボレーを決める。しかもラケットに触れるその瞬間まで、どこにボレーが打たれるかは予測不能。大胆にして繊細、流麗にして神出鬼没な望月のプレーに、観客はもちろん、通路に立つ警備員までもが「オオッ!」と感嘆の声をあげた。
第1セットは、6-1で望月。ハチャノフのエースはゼロどころか、望月の読みが外れた場面は皆無と言えるほどだった。
観客を沸かせた望月の変幻自在のテニスは、ハチャノフの心をかき乱す。実際に彼は、望月のプレーを「コート上にウイルスを撒き散らすよう」との独特の形容で、いかに自身のプレーが浸食されたかを言い表した。
「コーチから、彼はネットに出てくるのが好きだとは聞いていた。ただ、あそこまでとは思わなかった。正確な数字は見ていないが、100回くらいは来たんじゃないかな?」
試合後のハチャノフが、苦笑しながらこぼす。実際にこの試合、望月がネットに出たのは90回。ハチャノフの体感は、かなりの部分で正しかった。
この日が過去数日に比べて寒く、ボールが飛びにくかったことも、ハチャノフが挙げた苦戦の要因だ。
「それもあり、どうやって彼を抜けば良いのか見当がつかなかった。ボールを入れに行けば、決められる。リスクをとったら、ミスになる」
途方に暮れたまま、第1セットは終わったという。
ただそこは、シングルス最高8位に達した、海千山千の29歳である。
「球速を少し落としてみたり、サーブも色々と模索した。大切なのは球速ではなく、コースだと思った」
試行錯誤を重ねるハチャノフが、第2セットはタイブレークの末に取り返す。だが第3セットは、再び望月がリターンとネットプレーに凄まじい冴えを見せ、6-4で奪取した。流れも、そしてファンの心も、望月の手中にある。唯一の懸念事項は、予選を含め既に4試合戦ってきた体力面だ。
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