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海外テニス

ウインブルドン14歳以下で優勝の宮澤紗希乃! 冷静沈着なメンタルと海外仕込みの技術でつかんだ大きな一歩<SMASH>

内田暁

2025.07.17

決勝ではライバルのベリンスカ(左)を逆転で下し優勝を飾った13歳の宮澤(右)。海外での経験を積みながら、「グランドスラムで活躍できる選手になる」という夢に向かって着実に歩みを進めている。写真:内田暁

決勝ではライバルのベリンスカ(左)を逆転で下し優勝を飾った13歳の宮澤(右)。海外での経験を積みながら、「グランドスラムで活躍できる選手になる」という夢に向かって着実に歩みを進めている。写真:内田暁

 渾身のリターンが相手のラケットを弾くと、こぶしを握りしめ、この日一番の喜びの声を上げた。ただその直後には、淡々とネットへ歩み寄り、対戦相手と固く抱擁を交わす。

 スコアは、3-6、7-5、10-5。2022年に新設されたウインブルドン14歳以下の部で、13歳の宮澤紗希乃がソフィア・ベリンスカを破り、頂点へと駆け上がった。
 
「すごい、うれしいです!」

 表彰式を終えた後。「今の率直な気持ち」を問われると、宮澤は笑顔で即答した。そのうれしさを、優勝直後に表出しなかったのは、「いつものこと」

「心の中では、すっごくうれしいんです」と、照れたように笑みをこぼした。
 
 感情の起伏を見せないのは、試合中でも同様だ。それは決勝戦の対戦相手と比べると、より明確なコントラストを描いた。

 生まれ歳は同じながら、誕生日で先を行くベリンスカとは、この1年で3度対戦。宮澤が2勝1敗でリードするが、「すっごく攻撃的な、かっこいいテニスをする子なんです」と、ある種の敬意と憧れも示すライバルである。

 だからこそ相手のプレースタイルも、そして激しい感情をあらわにする性格も重々承知。自分のミスに叫び、主審から受けたタイムバイオレーションに不満を募らせる相手にも、宮澤は付き合う素振りは、まるでなし。相手のミスを期待することもなく、あくまで自分のテニスに徹した。

 もっともプレー内容的には、理想とは異なるスタイルを強いられた。相手の強打は、芝では低く深く差し込んでくる。自分の時間を削られるため、宮澤が最大の武器とするネットプレーやドロップショットを封じられた。それでも宮澤はベースライン上で左右に走り、苦しい体勢からも生きたボールを鋭く打ち返す。

「ハードコートとかだと、もっと前に行けるんですけど、やっぱり芝だと球が強くて、いつもよりは行けませんでした」
 
 そう振り返りつつも、「意外と後ろでも戦えました」と自信も深める。いずれのセットも、立ち上がりは「緊張して」相手に大きくリードされるも、そこから追い上げた。第1セットはとらえきれなかったが、第2セットでは2ブレークダウンから追いつく。敗戦まで数ポイントに追い詰められた時も、「もうビビってもしょうがない、思い切ってやろう」と自分に言い聞かせた。太ももをピシャリと叩き、「よしっ!」と小さく叫ぶのは、いつもの気合いを入れるルーティン。第2セットを逆転で取ると、10ポイントタイブレークの4-4の場面で、会心のサーブ&ボレーを決めた。

「タイブレークでは、1回くらいやりたいなと思ってました。調子に乗って、そのまま行けたら良いなと思って」

 果たして狙いは、気持ち良いまでに奏功する。このサーブ&ボレーを機に、宮澤は怒涛の4ポイント連取。足を止めず、ゴールまで一気に駆け抜けた。

 7歳の頃に海外で試合をした宮澤は、帰るたびに「楽しかった、また行きたい!」と両親にせがんだという。研究者であり、米国の大学で学んだ経験もある父は、子どものうちから海外経験を積むことに前向き。

「勉強はいつでもできるが、スポーツができる時期は限られている。テニスの奨学生として、海外の大学に行く将来もある」

 そのような理念のもとに両親は、欧州に強いコネクションを持つ松島徹コーチに娘を一任。ガエル・モンフィスらを顧客に持つエージェント会社 “スターウィング”の支援も受け、ここ数年の宮澤は、欧米のトップジュニアたちに揉まれながら腕を磨いている。
  
 今大会の優勝は、「去年のオレンジボウルと同じくらい」に位置づけられる、キャリアで最もうれしいタイトル。なおオレンジボウルの決勝で当たったのも、ベリンスカだった。

 夢は、「グランドスラムで活躍できる選手になること」。目指す未来へと伸びる道を、まっすぐに歩んでいく。

現地取材・文●内田暁

【画像】ヨーロッパのジュニア大会情景集

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