「精神面」という曖昧な定義で済ませるのではなく、明瞭でロジカルな説明に、昨今の取り組みへの自信と矜持がにじむ。それは今季、新たに雇ったフェデリコ・リッチコーチと共に、重点的に取り組んできた点でもあるからだろう。
「ちゃんと考えてテニスしろって、コーチには言われ続けている」と坂本が明かす。
「大事なポイントなどで、一番理にかなった戦術をやり続けた方が、結局は勝つ確率が高くなるというのを散々言われていて。それが少しずつ自分なりに理解できて、まだたまにですが、試合でも出せるようになってきたかなと思います」
一昨年の敗戦とプレースタイルの転換。昨年抱いたプロとしての自覚。そして、今年の「考えるテニス」。それら過去2年間の集大成とも言えるのが、今大会の決勝戦だった。
対戦相手の内田海智は、今大会の3回戦で錦織圭を圧倒するなど絶好調。本人も「今は何を打っても入る気がする」と、コート上の姿にも語る言葉にも自信が満ち満ちていた。
坂本との決勝戦でも、内田の勢いは止まらない。多少体勢が崩れても、ボールをしばき相手コートに突き刺す剛腕が唸る。最近改善したサービスは、要所でエースとなった。そして心の余裕をそのまま映す、ドロップショットなどの洒脱なプレー。
第1セットは内田が6-4で先取し、第2セットでも幾度もブレークの機をつかむ。試合の流れは、完全に内田にあった。
それでも坂本は、タイブレークの末に第2セットを取り切る。特に、坂本と内田の両者が「試合のターニングポイント」に挙げたのが、坂本サービスの第7ゲーム、そして第11ゲームで迎えた2度の15-40だった。
坂本にとってはブレークの危機、内田にとってはチャンスだったこの場面で、坂本はいずれも好サービスを連発する。それも、内田がリターン時にフォアで強打することを読んだ配球。内田の一発の破壊力を承知し、「すごいのを決められたら、しょうがない」と割り切った上での選択だった。
試合開始から、2時間15分。ワイドへのサービスウイナーで熱戦に終止符を打った坂本は、その場にゆっくり大の字に倒れると、両手を天に広げ、「よく頑張ったぞーーーーー!!!!」と叫んだ。
「本当にカイチ君のプレーは、どうしようもない時間帯が結構あった。戦略的な穴も見つからなかったので、カイチ君の球のペースに少しずつ慣れ、1本ずつ凌げるポイントが増えたことが、1つの差だったと思います」
過去の逆転勝利のように、相手のプレーを分析し戦略的立案ができたわけではない。それでも相手のプレーに慣れ、まさに「よく頑張って」手にしたタイトル。
それは195センチの19歳が、大器を満たす新たなピースを、また1つ手に入れた瞬間だった。
取材・文●内田暁
【画像】坂本怜が内田海智を逆転で下し、チャレンジャー大会3度目のV|横浜慶應チャレンジャー2025 最終日
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「大事なポイントなどで、一番理にかなった戦術をやり続けた方が、結局は勝つ確率が高くなるというのを散々言われていて。それが少しずつ自分なりに理解できて、まだたまにですが、試合でも出せるようになってきたかなと思います」
一昨年の敗戦とプレースタイルの転換。昨年抱いたプロとしての自覚。そして、今年の「考えるテニス」。それら過去2年間の集大成とも言えるのが、今大会の決勝戦だった。
対戦相手の内田海智は、今大会の3回戦で錦織圭を圧倒するなど絶好調。本人も「今は何を打っても入る気がする」と、コート上の姿にも語る言葉にも自信が満ち満ちていた。
坂本との決勝戦でも、内田の勢いは止まらない。多少体勢が崩れても、ボールをしばき相手コートに突き刺す剛腕が唸る。最近改善したサービスは、要所でエースとなった。そして心の余裕をそのまま映す、ドロップショットなどの洒脱なプレー。
第1セットは内田が6-4で先取し、第2セットでも幾度もブレークの機をつかむ。試合の流れは、完全に内田にあった。
それでも坂本は、タイブレークの末に第2セットを取り切る。特に、坂本と内田の両者が「試合のターニングポイント」に挙げたのが、坂本サービスの第7ゲーム、そして第11ゲームで迎えた2度の15-40だった。
坂本にとってはブレークの危機、内田にとってはチャンスだったこの場面で、坂本はいずれも好サービスを連発する。それも、内田がリターン時にフォアで強打することを読んだ配球。内田の一発の破壊力を承知し、「すごいのを決められたら、しょうがない」と割り切った上での選択だった。
試合開始から、2時間15分。ワイドへのサービスウイナーで熱戦に終止符を打った坂本は、その場にゆっくり大の字に倒れると、両手を天に広げ、「よく頑張ったぞーーーーー!!!!」と叫んだ。
「本当にカイチ君のプレーは、どうしようもない時間帯が結構あった。戦略的な穴も見つからなかったので、カイチ君の球のペースに少しずつ慣れ、1本ずつ凌げるポイントが増えたことが、1つの差だったと思います」
過去の逆転勝利のように、相手のプレーを分析し戦略的立案ができたわけではない。それでも相手のプレーに慣れ、まさに「よく頑張って」手にしたタイトル。
それは195センチの19歳が、大器を満たす新たなピースを、また1つ手に入れた瞬間だった。
取材・文●内田暁
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