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海外テニス

かつて夢見たグランドスラムへ…澤柳璃子、牟田口恵美、元トップジュニアの2人が歩む、コーチとしてのセカンドキャリア

内田暁

2020.02.25

昨年の東レPPOに出場した大前(右)とコーチの牟田口(左)。写真=本人提供

昨年の東レPPOに出場した大前(右)とコーチの牟田口(左)。写真=本人提供

 澤柳と並びもうひとり、10年前までは同世代のトップを疾走しながらも、コーチとして今大会のコートに立っていた人物がいた。

 牟田口恵美。
 盛田正明ファンドの支援を受け13歳でIMGアカデミーに留学するも、20歳にして自らの意志で現役生活に終止符を打った、かつてのエリート選手である。

 周囲から見れば突然の引退ではあったが、牟田口にしてみれば、それはプロ転向時に決めた覚悟とけじめの実践であった。「3年以内に、グランドスラム予選に出られなければやめる」というのが、彼女が自身に立てた誓い。だから引退を決めた時も、さほど迷いは無かったという。

「セカンドキャリアで絶対に成功してみせる」。
 それが彼女の新たな誓いでもあった。

 引退の半年後に、牟田口は慶應義塾大学に入学する。「日本のアスリートが、世界に飛び立てる環境を作りたい」との想いを胸に飛び込んだ新たな環境で、経済や政治など多岐な分野を学び、多くのアスリートとの交流も持った。
 
 卒業後は盛田氏の勧めもあり、フロリダ州のクラブメッドに女子派遣ジュニアのサポートとして渡る。そうして、川口夏実を全豪ジュニアダブルス優勝へと導くなどの実績を残した後、昨年の夏に帰国。新たなキャリアを模索し始めたその時に、同期で友人の大前綾希子から「コーチとしてオファーできないかな?」と相談を持ちかけられた。

 トライアルとして帯同した最初の大会が、広島開催の花キューピットオープン。そこから正式にコーチに就任し、その間に大前はランキングを283位から241位にまで上げている。今大会での大前は、最終的に優勝したシュン・ファンインに惜敗した末のベスト4。大前の武器であるフォアで攻めるパターンを増やし、最終的にはネットで決めるテニスが、徐々に形になりはじめている。
 
 澤柳と牟田口に共通するのは、選手としての経験を生かし、相手が欲していることに先回りして対応できること。また、歳の近い同性として赤裸々な悩みにも耳を傾け、オフコートでは友人として楽しい時間を共有できる点である。

 そして、もう一つ……2人が共通して掲げる当面の目標がある。それが、自分が傍らに立つ選手と共に、かつては自らが夢見た、グランドスラムへと行くことだ。
 
文●内田暁

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