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国内テニス

波形純理、38歳の決断――所属先を離れ、再びグランドスラムへの夢を追う【女子テニス】

内田暁

2020.12.04

波形はジャイアンツとMr.Childrenの熱烈なファンだという。好きなものを屈託なく楽しむ姿勢も、彼女が長く現役を続けられている理由かもしれない。写真:本人提供

波形はジャイアンツとMr.Childrenの熱烈なファンだという。好きなものを屈託なく楽しむ姿勢も、彼女が長く現役を続けられている理由かもしれない。写真:本人提供

 愛媛に残れば、練習環境は維持できる。だが、本当にそれが目標へと続く道なのかと自問した時、返ってくる答は「イエス」ではなかった。

 愛媛を離れれば、しばらくテニスの練習はできないだろう。ラケットを握らぬ日々が続くことに、不安がないわけではない。それでも波形は「東京に残り、テニスを休むという選択ができたんです」と、声に明るい色を乗せる。

「テニスはやらずに、トレーニングをやっていました。そこで成長したなって思えたし、伊予銀行を辞める決断もできたんです」

 スポンサーや拠点を失うことを周囲は心配するが、当の本人は「なぜか大丈夫だと思えている。それが一番の強みです」と快活に笑った。

 現在の波形の立ち位置は、本人いわく「ふらふら流浪のプレーヤー」。母校の早稲田大学やテニススクールを渡り歩きながら、以前から磨きたいと思っていた課題にも取り組んでいるという。

 そのテーマが、「スピン系のショットを取り入れること」。そして「ネットプレーにつなげる展開」。最近はポイント練習の中でも、それらができている手応を感じられているという。
 
 ちなみに最近の波形が、最も頻繁に練習を共にするのが、18歳の佐藤久真莉。先の全日本選手権では、ベスト8の波形の上を行く、4強入りを果たしたホープだ。
「久真莉ちゃんとは良い練習ができるし、(野球の)巨人軍好きという共通項もあって、最近一番仲良くしているんです」と笑う彼女の若さの源泉には、若手との時間の共有もあるのだろう。

 未だ続くコロナ禍の中で、テニス界の先行きはまだ不透明なまま。それでも波形は、「今はいつでも試合に出られるようにスタンバイしています。来年の1月からでも、これが1年伸びたとしても大丈夫」と、泰然自若の体で構えている。

 野球観戦やおいしい食事を楽しみつつ、その先に追うのはもちろん、テニス選手が誰もが目指す、あのステージだ。
「やはり目標は、グランドスラム。2年前に予選に出て、でも勝てなかった悔しさがありますから」

 出場するのは、年々難しくなっているかもしれない……という疑念も、時折胸をよぎりはする。それでも揺らぎない声で、彼女ははっきりと言った。

「でもそこを目指していれば、良いことあるよなって気がしています」と。

取材・文●内田暁

【PHOTO】38歳の波形がベスト8入り。2020全日本選手権での女子選手プレー集
 

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