実に不思議な親子である。
母親は母性愛のかけらも見せず、父親の役目まで一手に引き受けていた。こういう場合、往々にして息子は反抗する。しかし、ジミーときたら、まるで飼い慣らされた犬のように従順なのである。
ジミーは、ハードなテニスレッスンの中で父親の不在を強く感じ、母親のヒステリックな愛情を享受するようになっていた。成長する過程で、母親への依存度がますます高まっていったのだ。
ジミーのオ能は千金に値すると思い始めた
そんなコナーズが一度だけ、グロリアに激しく抵抗したことがある。
コナーズは少年の頃、やせて非力だった。力不足を補うため、バックハンドは両手で打っていた。これをグロリアは快く思っていなかった。大成するには片手打ちであるべきだと考えていたのだ。
この当時――1960年代――のテニスの指導者層は、概して両手打ちを好ましく思っていなかった。両手打ちのプレーヤーで成功した選手がいないというのが、その理由だった。ジミーだけにかぎらず、クリス・エバートもピヨン・ポルグも周囲の者たちに両手打ちを反対されている。
しかし、子どもだった彼ら(あるいは彼女)にとって、両手打ちは実に都合の良い打ち方だった。この打法を使えば、これまでネットを越えなかったボールも楽にネットを越える。つまり、非力を補えるわけだ。ボルグは当時(11歳)のことを後にこう語っている。
「周囲の大人たちは、両手打ちのバックハンドは間違っていると言って、無理に変えさせようとした。しかし、私は両手打ちの方が打ちやすかったので、アドバイスにまったく耳を貸さなかった。しまいに大人たちはカンカンに怒ってしまった。仕方がないので『もう少ししたら、片手打ちに変えるよ』とその場をとりつくろったが、心の中ではガンとして変える気などなかった」。ボルグのこのガンコさが、周知のとおり、後に大きな実を結ぶことになる。
母親は母性愛のかけらも見せず、父親の役目まで一手に引き受けていた。こういう場合、往々にして息子は反抗する。しかし、ジミーときたら、まるで飼い慣らされた犬のように従順なのである。
ジミーは、ハードなテニスレッスンの中で父親の不在を強く感じ、母親のヒステリックな愛情を享受するようになっていた。成長する過程で、母親への依存度がますます高まっていったのだ。
ジミーのオ能は千金に値すると思い始めた
そんなコナーズが一度だけ、グロリアに激しく抵抗したことがある。
コナーズは少年の頃、やせて非力だった。力不足を補うため、バックハンドは両手で打っていた。これをグロリアは快く思っていなかった。大成するには片手打ちであるべきだと考えていたのだ。
この当時――1960年代――のテニスの指導者層は、概して両手打ちを好ましく思っていなかった。両手打ちのプレーヤーで成功した選手がいないというのが、その理由だった。ジミーだけにかぎらず、クリス・エバートもピヨン・ポルグも周囲の者たちに両手打ちを反対されている。
しかし、子どもだった彼ら(あるいは彼女)にとって、両手打ちは実に都合の良い打ち方だった。この打法を使えば、これまでネットを越えなかったボールも楽にネットを越える。つまり、非力を補えるわけだ。ボルグは当時(11歳)のことを後にこう語っている。
「周囲の大人たちは、両手打ちのバックハンドは間違っていると言って、無理に変えさせようとした。しかし、私は両手打ちの方が打ちやすかったので、アドバイスにまったく耳を貸さなかった。しまいに大人たちはカンカンに怒ってしまった。仕方がないので『もう少ししたら、片手打ちに変えるよ』とその場をとりつくろったが、心の中ではガンとして変える気などなかった」。ボルグのこのガンコさが、周知のとおり、後に大きな実を結ぶことになる。