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海外テニス

ジョコビッチとナダルによる“史上最高のセット”にテニス界がどよめく。全仏男子決勝は赤土の王者を倒したジョコビッチと初優勝を狙う22歳のチチパス<SMASH>

内田暁

2021.06.13

ライバル対決の第3セットはスーパープレーの連続。テニス選手も絶賛した。(C)Getty Images

ライバル対決の第3セットはスーパープレーの連続。テニス選手も絶賛した。(C)Getty Images

 ネット際に落とされたドロップショットを、地面ぎりぎりで救い上げたナダルがさらに鋭角に沈める。コーナーをえぐるナダルのフォアの逆クロスを、絶対に追いつけないと思われたジョコビッチがフォアのクロスでウイナーを決める。

 ロブを背走するナダルが、振り向きざまに打ったショットがネットをかすめ、待ち構えていたジョコビッチに当たる場面もあった。

 ショットバラエティ、ラリー構築力、フィジカル、そして、運——。

 テニスが有する全ての要素を、極限まで研ぎ澄まし集束させたセンターコートに、世界中の関係者たちの視線も注がれていた。

 アンディ・マリーは「クレーコートで、これ以上のテニスはできない。パーフェクトだ」とつぶやき、ヘザー・ワトソンも「もしテニスファンでないなら、今すぐこの試合を見て。必ずファンになるから‼」とツイートする。準々決勝でナダルからセットを奪ったディエゴ・シュワルツマンですら、「彼らが今やっているテニスは、僕らと同じ競技なの?」と絶句したほどだ。
 
 互いにチャンスを得て、しのぎ、肩をぶつけ合うように走り込んだタイブレーク。その終盤で心の揺らぎを見せたのは、赤土の王者の方だった。決定的に見えたボレーが、芯を外してラインを割る。最後は、やや浮いたドロップショットを、ジョコビッチが打ち返した。

 耳に手を当て、ファンの歓声に身を浸すジョコビッチ。第3セットが始まってから、1時間27分が経過していた。

 この時点で、時計の針は夜の10時38分を指す。23時以降の外出が禁じられるパリの条例に従えば、観客が帰される時間だったが、大会は特例的に残ることを認めた。熱狂の叫びをあげ、さらなる熱戦を期待するファン。

 だが実質的な勝敗は、第3セットが終わった時点で決していた。疲労の色を見せるナダル相手に、ジョコビッチが0-2から6ゲームを連取。それはナダルが、2005年から出場しているこの大会で、わずか3つ目の敗戦を喫した瞬間だった。

 ジョコビッチが、感極まった表情で万雷の拍手を浴びた時から遡ること、4時間半——。

 同じセンターコートでは、22歳のステファノス・チチパスが、勝利インタビューで涙に声を詰まらせていた。初のグランドスラム決勝の切符をかけて対戦したのは、2歳年長のアレクサンダー・ズベレフ。
 
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