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海外テニス

全米オープン予選決勝で敗れた3人の日本女子、日比野菜緒、土居美咲、内島萌夏がもがき苦しんだ中でつかんだ希望<SMASH>

内田暁

2022.08.29

長年のコーチと別れ、新たなテニスのスタイルを模索する土居美咲。予選突破はならなかったが、2つの白星は今後への道しるべとなろう。写真:内田暁

長年のコーチと別れ、新たなテニスのスタイルを模索する土居美咲。予選突破はならなかったが、2つの白星は今後への道しるべとなろう。写真:内田暁

 7月中旬の段階でランキング250位前後だった日比野は、ボーダー外ながらもハンブルクとプラハのWTAツアー予選に出るべく、現地に足を運ぶ。すると、両大会とも直前で予選に繰り上がり、その僥倖を生かし、いずれの大会も予選を突破。

 とりわけプラハでは、ラッキールーザーとして本戦入りし、しかも2回戦で第2シードのバーバラ・クレイチコワから大逆転勝利をつかみ取った。

 この勝利でランキングを200位まで上げた日比野は、全米オープン予選出場圏内へと飛び込む。全米予選では腰痛に苦しめられながらも、初戦でルイザ・チリコ、2回戦ではワン・チャンという実力者を破った。

「2年後のパリ・オリンピック」を次なるマイルストーンに定めた日比野にとって、今大会は新たな旅のスタート地点となる。
 
「試合前も試合中も、自分を洗脳してますよ!『私は強い! 私はできる!』って」

 快活な笑いに幾分の苦みを交えたのは、31歳を迎えた土居美咲である。

 最高位は、6年前に記録した30位。グランドスラム本戦出場も、36回を数えている。その土居が今、新たなテニスを模索し、迷いと葛藤を抱えていると言った。

 土居は今年7月に、8年近く師事したコーチのクリス・ザハルカと別れ、独立独行で歩んでいる。ザハルカコーチとはここ最近、「前に出る」テニスに取り組んできた。そのために、「前に出なきゃ出なきゃと思い、余裕がなくなっていた」と明かす。心も技も切迫する中で、リセットの意味合いもあり、下したのがコーチとの離別だったのだろう。

「今までやってきたことと、自分がやりたいテニスを組み合わせて、自分なりに考えて取り組んでいる段階」。それが、土居自身が俯瞰する彼女の現在地だ。

 今回の全米オープン予選では、土居は「組み合わせ」のレシピを味得したかのように、痛快な攻めで2つの快勝を得た。

 予選決勝でも、第2セット途中までは、土居が完全に主導権を握る。ただ……第2セット終盤で追い上げられたことで、攻守の配合のバランスがやや崩れ出した。それでも第3セットで巻き返しマッチポイントに到達したが、急な降雨に見舞われ試合が中断するという、あまりの不運に見舞われる。

 再開後は、最初のポイントを長いラリーの末に失い、結果、総計5本のマッチポイントを逃しての敗戦となった。

 噛み始めた歯車は、最後の最後に、雨にも濡れ空転する。それでも進むべき先は、並んだ2つの白星が差し示しているはずだ。

 なお土居は現時点で、ラッキールーザーの1番目。現地時間30日まで、本戦出場の可能性は残される。
 
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