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国内テニス

現役引退の元世界70位の尾﨑里紗が振り返る「しんどいテニス」と「楽しいテニス」<SMASH>

内田暁

2022.10.28

自己最高となる世界70位を記録した2017年から一転し、翌2018年は悪夢のような日々が続いたという(写真は2018年全豪オープン)。(C)Getty Images

自己最高となる世界70位を記録した2017年から一転し、翌2018年は悪夢のような日々が続いたという(写真は2018年全豪オープン)。(C)Getty Images

 コロナ禍に入り、テニスの大会が次々に中止になって以降、尾﨑は実戦のコートから完全に離れていた。心のどこかで、「もうツアーに戻ることはない」と悟り、それでも「引退」の二文字には踏み切れなかった、この2年半。

「自分とすごく向き合う期間」を経た末に、「今年で引退しよう」と決断したのが、春先のことだった。

 そこからケジメの日を求め、そうして練習を再開した時、彼女の中で、かつてない感情が芽生えたという。

「今まで言われて練習をしていたのが、この数カ月間は、自分から、ちょっとでも良くなりたいと思って練習してたんです。初めて、そう思ったのかも。そしたらこの数カ月は、テニスが楽しいって思える時間がすごく増えて。自分でこうしたいとか、ここが良い感じだと考えながら練習できて、それは自分の中で、すごくよかったんです。しんどいだけの練習っていうところから、テニスが楽しいって思いながら練習できたのが」

 この感じで、今までもできていたらな――、そんな風に思うことも増えたのだと、彼女は付け加えた。
 

 この20年ほどを振り返り、練習を「つらい」「しんどい」の言葉で形容する彼女にとって、最も苦しかったのは2018年。前年の活躍で手にしたポイントが、1年経過し消えていくたび、ランキングは急下降をたどった。

「18年に入ったらガクッとランキングが落ちてしまって、なかなか上がらないどころか下がる一方で。

 今まで負けなかった人に負けてしまったりとかが、すごく増えたのが23歳の頃なんです。そこから数年間が、すごいしんどくて」

 その「しんどさ」の詳細を、彼女は次のように明かす。

「練習では自分なりに頑張って、いい感じに仕上げてから遠征に行くのを繰り返してたんです。それなのに、勝てない。もともと緊張しやすい性格で、ジュニアの頃からなんとか粘りと気合いで勝ってきたんですが、この頃は、練習でやったことが全然発揮できなくて。性格的にも、ランキングが落ちることへのプレッシャーを感じたのか、緊張して腕が振れなくなったり。一番苦しいのは、練習したことが試合でできないし、うまくいかないことだったんです」

「練習しても、これ、意味ないんじゃない?」

 ある頃から、そんな疑念に襲われた。自分を信じ切れず、練習の意義を疑い、テニスを続けることの意味を見いだせなくなる。それが、世がコロナ禍を迎える2020年初頭の頃だった。
 
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