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海外テニス

恩師グローネフェルトが明かすダニエル太郎、躍進の理由。「ファンとのコネクト」が生んだ絶大なエネルギー<SMASH>

内田暁

2023.03.25

シャラポワ(右)をはじめ多くの世界1位を指導してきたグローネフェルト(左)。現在はダニエルのアドバイザーとして幅広くサポートする。(C)Getty Images

シャラポワ(右)をはじめ多くの世界1位を指導してきたグローネフェルト(左)。現在はダニエルのアドバイザーとして幅広くサポートする。(C)Getty Images

 氏が言及する「ファンとのコネクト」は、まさに3月中旬のBNPパリバ・オープンで、ダニエルが見せた姿そのものだ。特に2回戦のマテオ・ベレッティーニ戦では、ダニエルはスタンドの四方に拳を振り上げ、最前列に座る青年たちから熱狂的な声援を受けた。

 てっきりダニエルの友人だと思ったこの一群は、「面識のない純粋なファン」だと後に判明する。3回戦でもキャメロン・ノーリーと死闘を繰り広げ、やはり観衆を盛り上げたダニエルは、試合後にこう語っていた。

「僕のことを知らないファンとも、つながることができた。見てくれた人が『見に来て良かった』と思ってくれたのも感じたし、何かを残せたと思う。それがうれしかったです」

 それこそが、ダニエルが数年かけて取り組んできたテーマであったのだと、グローネフェルト氏の話を聞いて判明する。

 そのことを伝えると、グローネフェルト氏はこう応じた。

「あの試合の太郎は、自分のボックスだけでなく、四方をよく見ていましたよね。私たちが彼に言ったのは、知らない人にも、しっかりと目を向けること。視線が合えば、ファンは『自分を見てくれた!』と思う。するとそこに“つながり”が生まれ、エネルギーが生まれます。それはプレーヤーにとって、実はとてつもない力になるんです」
 
 この言葉を聞き、またも、つい先日にダニエルから聞いた言葉と氏の教えが結びついて、発火した。そのダニエルの言葉とは、ワールドベースボールクラシックのメキシコとの準決勝生観戦時の感激。日本チームの劇的な“さよなら勝利”の口火を切った、大谷翔平の2ベースヒットを目撃した時のダニエルの思いだ。

「大谷さんがヒットを打って二塁に立った時、こうやって(と両手を振り上げる)こっちを見てくれた時に、鳥肌が立ったんです。やっぱり選手が自分に目線を向けると、気持ちが上がるものなんだなって。それは普段は自分がやる立場だけれど、それを逆側から感じられたのは、すごいうれしかったですね」

 奇しくもこの時、ダニエルはコーチやスポーツ心理学者から言われてきた「選手とファンとのつながりの重要性」を、観客の立場として感得できたのだ。だからこそダニエルはあれほどまでに、「大谷さんの視線」に興奮していたのだろう。

 種々の教えと経験を経て、今のダニエルは「他者とつながる」ことが以前より容易になった。だからこそダニエルとグローネフェルト氏の間にも、一層強い信頼関係が生まれ、同じ目的地に向け取り組めるようになったと氏は言う。

「太郎のピークは、まだまだこの先に来ますよ」

 柔和な笑みで語るグローネフェルト氏の言葉は、確かな説得力を帯びて重く響いた。

現地取材・文●内田暁

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