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海外テニス

全米初戦敗退のダニエル太郎が女子ベテラン選手の言葉に共鳴「テニスやっていて『良いな』と思えることをやっていきたい」<SMASH>

内田暁

2023.08.31

ダニエルはシグムンドが会見で語った「テニスプレーヤーとは、パフォーマーだと思っている」の言葉が腑に落ちたという。(C)Getty Images

ダニエルはシグムンドが会見で語った「テニスプレーヤーとは、パフォーマーだと思っている」の言葉が腑に落ちたという。(C)Getty Images

 今季のダニエルは春のハードコートシーズンで、キャスパー・ルード(当時4位)やアレクサンダー・ズベレフ(同15位)、マテオ・ベレッティーニ(同23位)らのビッグネームを立て続けに破った。だがランキングポイントは、上位選手を破ったからといって、多く入ってくるわけではない。思いのほか上がらぬランキングに、「自分の実力とランキングが合っていない」と感じているとも言った。

 その思いの背景にあるのは、今季から導入された、ATPチャレンジャーにおける大会カテゴリーやポイントの変更だ。ツアーの下部大会群に相当するチャレンジャーでは、従来は優勝者に125ポイント付与される大会が最高カテゴリーだった。そこに今季から“175”カテゴリーが加わる。この変更により、ツアーでのプレー経験がほとんどない選手でも、トップ100に入ってくるようになった。

 ダニエルも、「ランキングを上げるだけなら、マスターズ1000の予選に出るより、チャレンジャーの方が良い」と感じているという。だが、本質はそこではないとも、彼は言った。

「ランキングを追っていくのは、正直もう疲れたという感じが、ちょっとあって。やっぱり今日みたいな雰囲気とか、昨日のシグムンドが記者会見で言っていた『私たちはパフォーマーである』みたいなメンタリティはすごく良いなと思って」
 
 ここでダニエルが言及する「シグムンドの会見」とは、ドイツのベテラン、ラウラ・シグムンド(世界ランク121位)が、1回戦でココ・ガウフ(同6位)に敗れた後のそれである。この試合では、シグムンドがポイント間に時間をたっぷり取ることに対しガウフが抗議。センターコートのファンも、ジグムンドにブーイングを浴びせかけた。

 試合後にシグムンドは、アメリカの観客に対し「敬意がない」と失望。自分がいかに「ファンのためにプレーしているか」を、涙ながらに訴えた。
 
「私は35歳。今の私が、何のためにテニスをしているのか? お金は十分に稼いだ。たぶん、シングルスの最高位(27位)にはもう届かないでしょう。でも私は、見てくれる人のためにプレーしている。ファンのために体力の続く限りトライしようとしている。テニスプレーヤーとは、パフォーマーだと思っている。子どもたちへの責任がある。お金を払ってチケットを買ってくれた人たちへの責任がある」

 このシグムンドの言葉に、ダニエルは「ちょっと、これかもな」と思う、自問自答への解を見いだしたと言った。

 来年のパリ・オリンピックには、「すごく出たい」とダニエルは言う。そのためにはランキングは必須だが、だからといって「自分の身体を削り、隙間から隙間を狙って取りに行くような、昔やっていたことはやめよう」とも言った。

「テニスやっていて『良いな』と思える、そこの調整をうまくやっていきたいなと思っています」

 その均衡の先にこそ、目指す地点もきっとある。

現地取材・文●内田暁

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