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海外テニス

『手負いのジョコビッチ』がいかに危険な存在かが証明された、アルカラスとの全豪オープン大逆転劇<SMASH>

内田暁

2025.01.23

ジョコビッチが足を痛めたことで勝利を予感したアルカラス(左)だったが、逆にその思いがプレーに迷いを生じさせ、気が付けば絶対王者に逆転勝利を許した。(C)Getty Images

ジョコビッチが足を痛めたことで勝利を予感したアルカラス(左)だったが、逆にその思いがプレーに迷いを生じさせ、気が付けば絶対王者に逆転勝利を許した。(C)Getty Images

 24度のグランドスラム優勝者は、この相手の小さな綻びを見逃さない。ジョコビッチは試合後の会見で、“手負いであることの優位性”を活用したと明言した。

「彼のためらいが見えていた。だからラリーで主導権を握るために、それを活用した。彼は途中から頻繁にドロップショットを打ち、僕を走らせようとし始めていた」

 そのような相手の迷いが「見えていた」のは、彼自身の経験にも依拠するという。

「ケガをした選手が、無我夢中でプレーし耐えているうちに、事態が劇的に変化する。ケガをした相手が良いプレーをし出すと、パニックになりはじめる。その感覚を、僕は知っている」

 冷静に語るジョコビッチは、こうも言った。

「彼(アルカラス)は、自分自身と向き合う以上に、僕を気にするようになっていた」と。

 そのようなジョコビッチの分析に照らすなら、第2セットこそが、この試合の分水嶺だったろう。

 第1セット終盤に痛み止めを飲んだジョコビッチだが、第2セットが始まった時点では、まだ十分に動けなかったという。その中で彼が取った策が「ベースライン近くに立ち、攻撃的に打つこと」だった。

 アルカラスの逡巡とは対照的に、やることが明確になったジョコビッチ。そして「第2セットの後半には、痛み止めが効き始めた」という要因が重なった時、ジョコビッチの言う「劇的な変化」が生じる。
 
 第2セットの第10ゲームでジョコビッチは、アルカラスのサービスを読み切ったかのように、次々に鋭いリターンを打ち返した。最後はバックハンドでダウンザラインに、リターンウィナーを叩き込む。ブレークと共に第2セットを奪ったこの時、試合の行方を指す針は反転した。

 第3セットでは長いラリーも増えたが、9回を数えた9本以上のラリー戦の内、7本をモノにしたのはジョコビッチ。また、アルカラスはジョコビッチを超えるサービス速度やエースを記録するも、セカンドサービスの取得率は33%に終わった。

 第4セットの序盤では、アルカラスが足の付け根を抑え、ぎこちなくストレッチする場面も。深夜1時に及ぶ3時間37分の死闘を4-6,6-4,6-3,6-4で制したのは、二児の声援をも背に受けた、37歳のジョコビッチだった。

「今は痛み止めが効いているが、寝て起きた時、どうなっているか? 僕は現実と直面することになるだろう」

 そう言い37歳は苦く笑う。
 
 ただ“手負いのジョコビッチ”がいかに危険な存在かを、彼は幾度もこのコートで証明してきた。

 準決勝の対アレクサンダー・ズベレフ戦は、準決勝から二日間挟み、1月24日に行なわれる。

現地取材●内田暁

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