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海外テニス

「テニス史上最高の一戦」で人々の記憶に刻まれた男、ベルダスコが明かした“ラストダンスの舞台裏” <SMASH>

内田暁

2025.02.27

ジョコビッチ(左)とのダブルスでは2回戦敗退に終わるも、ダブルス巧者ぶりを存分に発揮したベルダスコ(右)。(C)Getty Images

ジョコビッチ(左)とのダブルスでは2回戦敗退に終わるも、ダブルス巧者ぶりを存分に発揮したベルダスコ(右)。(C)Getty Images

 引退試合の期日が決まって以降、ベルダスコは「必死に練習とトレーニングをしてきた」と笑う。その成果は、軽快なフットワークや、鋭いボレーへの反応に伺えただろう。特に、コートサイドに走りながら左腕を振り抜き、審判台とポールの間を射貫くように打ち込む強打は、彼の代名詞。往時を彷彿させるそれら“ポール回し”や、相手の陣形を崩すロブなどダブルス巧者の技も存分に発揮し、ファンを大いに沸かせた。

 結果的に2度行なわれた会見室の雰囲気も、彼がいかに人々に愛されていたかを伺わせる。「今後」について問われた彼は、「まだ決まっていない」と応じた。ここ数年、オンス・ジャバー(チュニジア)やアレハンドロ・ダビドビッチフォキナ(スペイン)らのコーチを短期でつとめ、指導者業にも大いに興味はあるものの、今は「家族との時間を大切にしたい」という。

 なおベルダスコとコーチ業と言って思い出されるのが、かつてエキジビションマッチでベルダスコとダブルスを組んだ錦織圭が、その戦術眼や分析力に驚いていたこと。「きっと彼は、引退したら良いコーチになるんだろうな」と、7度の対戦を重ねた6歳年長者を表していた。
 
 初戦後、そして最後の試合となった2回戦後にも、前述の「全豪のナダル戦」についての質問が飛ぶ。「テニス史上最高の一戦だと思う」との見解も述べた記者の1人は、「もしあの試合に勝っていたら、あなたのキャリアは変わっていたと思うか?」と尋ねた。

 口の端に、ややシニカルな笑みを浮かべた彼は、「もし決勝で、(ロジャー・)フェデラー(スイス)に勝てればね」と、さらなる「もし」に言及する。

「グランドスラムで優勝すれば、確かに僕のキャリアは違うものになっていただろう。でも、いつだったかマーク・フィリポーシス(オーストラリア)が言っていたように、誰も準優勝者のことは覚えていない。人々が覚えているのは、優勝者だけだ。だから、もし僕があの準決勝でラファに勝っていたとしても、決勝でロジャーに勝てなければ、何も変わらなかったと思う」

 ありえたかもしれない「もし」ではなく、目の前の1球を全力で追う。25年間その信念を貫くことで、彼は人々の記憶に残った。

現地取材・文●内田暁

【動画】テニス史に残る名勝負となったベルダスコVSナダルの「全豪オープン 2009」準決勝ハイライト

【画像】ベルダスコ、フェデラー、ジョコビッチらトップ選手たちの美しいフォーム集!

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