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海外テニス

ジョコビッチ独走の流れがコロナ中断を挟んで急変。全米初Vのティームがビッグ3を脅かす存在に【2020男子ツアー回顧】

内田暁

2020.12.28

ATPファイナルズでは、ラウンドロビンでナダルを破った後、準決勝で王者ジョコビッチに勝利。ティームはビッグ3の覇権を奪いつつある。(C)Getty Images

ATPファイナルズでは、ラウンドロビンでナダルを破った後、準決勝で王者ジョコビッチに勝利。ティームはビッグ3の覇権を奪いつつある。(C)Getty Images

「ティームが、圧倒的な優勝候補」――メディアを賑わすそれらの声が、第2シードを「ものすごく硬くさせた」ことを、本人は後に明かしている。決勝の立ち上がりから表情がこわばり、ショットに本来のパワーを欠くティーム。

 対するズベレフは、広角に打ち分けるストロークから最後はネットで決めるパターンで、面白いようにポイントを重ねていく。第1、第2セットを奪い、第3セットも23歳の挑戦者が先にブレーク。このままあっさり勝負は決するかに思われた。

 だが今度はズベレフが、優勝の重みに身体の自由を奪われる番だ。サービスの確率が落ち、フットワークも重くなる。その相手の乱れを逃さず第3セットをもぎ取ったティームが、第4セットも奪取。

 そして第5セットでは、両者が等しく、心のゆらぎをさらけ出した。互いにチャンスを取り切れず、ファイナルセットのタイブレークにもつれ込んだ精神戦――。その死闘を制し、最後コートに大の字に倒れ込んだのは、「どうしても優勝したかった。凄まじいプレッシャーの中で戦っていた」と涙した、ティームだった。
 
 一部メディアでは、「ここ数年のグランドスラムで、最も質の低い男子決勝戦だった」と、心無い言葉も囁かれた試合ではある。ただ、両者ともに優勝の可能性を強く信じる中で、人間味溢れる感情の動きにより、グランドスラムタイトルの価値を浮き彫りにした大会でもあった。

 その価値を毀損することを禁ずるかのように、ティームは続く全仏オープンで、疲労困憊の身体を引きずりながらベスト8へと進出。激動のシーズンの掉尾を飾るATPファイナルズでは、優勝には及ばなかったものの、ナダルとジョコビッチの両者を破り、同大会で2年連続決勝進出を果たす。

 この結果によりティームは、ナダル、ジョコビッチ、フェデラーの全てから5勝以上挙げた、史上2人目の選手となった。

文●内田暁

【PHOTO】2020年全米でグランドスラム初優勝を果たしたティームのプレー集
 
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