女性に対しては純情な男
マッケンローはこう言っている。
「女性に対してはおくてのところがずっとあったよ。気に入った娘がいても、振られるんじゃないかと思うと、なかなか自分の気持ちを言い出せなかったものさ」。テニスコート上での傍若無人の姿とは裏腹な一面がここにはある。彼は女性に対しては、ごく"純情"な男なのである。
ここで、マッケンローがこれまで交際した女性たちを振り返ってみよう。
テータム以前、マッケンローの恋人としてよく知られたのは、ステーシー・マーゴリンとステラ・ホールである。ステーシーとは、ジュニア時代からの仲良しで、いわば幼友達であった。ともに大学に進んでから本格的な交際が始まった。こんな逸話がある。1977年7月のことだ。
「俺はウインブルドンで準決勝まで進んで、有項天だった。何しろ予選から8連勝もしたんだから注目の的さ。家に帰ってから、すぐにステーシーのところに電話をしたんだ。喜び勇んでね。ところが、ステーシーの声が沈んでいるんだ。『父がたった今、亡くなったの』と言うじゃないか。頭をガーンと殴られる気がしたよ。ステーシーの悲しみも知らないで一人で勝手にウキウキしていたんだからな、俺はとても恥ずかしかったよ」
これをきっかけにして、2人の仲はさらに深まったが、結局は長続きしなかった。なぜか? お互いに自分を主張しすぎるために口争いが絶えなかったのだ。たとえば、この2人は、デートの待合わせ場所を決めるだけで30分はもめるだろう。こんなことなら、食事の好みを合わせるのに一生かかってしまう。
それに、お互いにテニスプレーヤーとしてスレ違いが多く、じっくり話し合う時間が少なかった。2人はいつしか疎遠になってしまった。しかし、決して憎み合って別れたわけではない。それだけが、マッケンローにとって救いだった。
(続く)
文●立原修造
※スマッシュ1986年10月号掲載原稿に加筆・修正
【PHOTO】マッケンローetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
マッケンローはこう言っている。
「女性に対してはおくてのところがずっとあったよ。気に入った娘がいても、振られるんじゃないかと思うと、なかなか自分の気持ちを言い出せなかったものさ」。テニスコート上での傍若無人の姿とは裏腹な一面がここにはある。彼は女性に対しては、ごく"純情"な男なのである。
ここで、マッケンローがこれまで交際した女性たちを振り返ってみよう。
テータム以前、マッケンローの恋人としてよく知られたのは、ステーシー・マーゴリンとステラ・ホールである。ステーシーとは、ジュニア時代からの仲良しで、いわば幼友達であった。ともに大学に進んでから本格的な交際が始まった。こんな逸話がある。1977年7月のことだ。
「俺はウインブルドンで準決勝まで進んで、有項天だった。何しろ予選から8連勝もしたんだから注目の的さ。家に帰ってから、すぐにステーシーのところに電話をしたんだ。喜び勇んでね。ところが、ステーシーの声が沈んでいるんだ。『父がたった今、亡くなったの』と言うじゃないか。頭をガーンと殴られる気がしたよ。ステーシーの悲しみも知らないで一人で勝手にウキウキしていたんだからな、俺はとても恥ずかしかったよ」
これをきっかけにして、2人の仲はさらに深まったが、結局は長続きしなかった。なぜか? お互いに自分を主張しすぎるために口争いが絶えなかったのだ。たとえば、この2人は、デートの待合わせ場所を決めるだけで30分はもめるだろう。こんなことなら、食事の好みを合わせるのに一生かかってしまう。
それに、お互いにテニスプレーヤーとしてスレ違いが多く、じっくり話し合う時間が少なかった。2人はいつしか疎遠になってしまった。しかし、決して憎み合って別れたわけではない。それだけが、マッケンローにとって救いだった。
(続く)
文●立原修造
※スマッシュ1986年10月号掲載原稿に加筆・修正
【PHOTO】マッケンローetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1