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海外テニス

【レジェンドの素顔4】マッケンローのスーパースターとしての素質は身体にある|後編〈SMASH〉

立原修造

2021.02.13

マッケンローは筋肉が少なく脂肪が多いしなやかな身体を生かして、ナンバーワンの座にのぼりつめた。写真:THE DIGEST写真部

マッケンローは筋肉が少なく脂肪が多いしなやかな身体を生かして、ナンバーワンの座にのぼりつめた。写真:THE DIGEST写真部

 しかし、今回の休養で、癒せないほどではない。マッケンローの肉体は、常人では及びもつかないほどの融通性を持っている。それは、変幻自在の「テクニック」とともに、彼をナンバーワンに押し上げる原動力となった。

 マッケンローの身体をマッサージした者は一様に、筋肉が思ったほどないこと驚く。一流のスポーツマンには、稀有なことだという。その分、皮下脂肪が多い。つまり女性的な身体つきをしているのだ。女性が男性より長命なのは、この脂肪のおかげだ。筋肉は衰えやすいが、脂肪はスタミナ源になる。

 筋肉が少なくて脂肪が多いマッケンローの肉体は長持ちにはうってつけなのだ。本来、こういう体型は瞬発力に劣るものだが、彼は天性の身体のやわらかさでそれを補っている。そのことはボールとのソフトなタッチを見ればすぐわかる。
 
 今後に、不安な点もいくつかある。

 一つはマッケンローが自分の体重をうまくコントロールできるかどうかということだ。父親を見るまでもなく、マッケンローは太る体質らしい。休養前の彼は明らかに理想体重を越えていたといえるだろう。

 しかし、再起を期すからといっても、無理なダイエットはやめた方がいい。ほどほどにすべきだ。年齢を考えると、急激な減量はスタミナ切れに結び付く心配がある。

 それからもう一つ。これからは筋力トレーニングを積極的に取り入れたいと、マッケンローが言及していることも不安な材料だ。

 筋力のピークは25歳頃といわれている。それ以上の筋力アップはいたずらに肉体を硬くする恐れがある。もし、そうなったら極端なクローズド・スタンスからのサービスなど、とても打てはしない。筋力がついたかわりに柔軟性が失われたのではマッケンローではなくなる。

 何も、筋力トレーニングなどに励まなくても、かつての「集中力」を呼び起こしさえすれば、再びナンバーワンの座につけるはずだ。マッケンローはそれだけの力量の持主なのだから――。

 筋骨隆々として胸が盛り上がったマッケンローなど、とても想像できないし、また、誰も見たくはないだろう。

文●立原修造
※スマッシュ1986年11月号掲載原稿に加筆・修正

【PHOTO】マッケンローetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
 
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