専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

【レジェンドの素顔5】ベッカーに逆転負けしたマッケンローが、再び歩み出した最強への道|後編<SMASH>

立原修造

2021.03.31

マッケンローは先の2年を見据えて、1986年に長期休養を取っていた。写真:THE DIGEST写真部

マッケンローは先の2年を見据えて、1986年に長期休養を取っていた。写真:THE DIGEST写真部

 しかし、課題も残った。一つはボレーだ。ボレーは全盛時の切れがなく、しかも凡ミスが多かった。もう一つは、もっと積極的にネットにつめることだ。出られるチャンスを躊躇する場面が何度もあった。これではいけない。もっとネットにつめて相手にプレッシャーをかけることが必要だ。

 マッケンローはその後、カナディアン・オープンでは3回戦負けを喫し、注目のUSオープンでは1回戦でアナコーンに敗退した。一部マスコミでは、"マッケンロー大ピンチ"の大見出しが登場していたが、それではマッケンローにあまり酷というものだ。大ピンチでもなんでもなく、それはある程度は予測されたことだ。

 何しろ、7か月もの長い間休養していた男が、いかに素質に恵まれていたとはいえ、復帰していきなり大きな大会で勝てるわけがない。全米1回戦負けは確かにふがいなかったが、マッケンローにはもう少し時間がいる。そのことはマッケンローの言葉が素直に表わしている。

「目先のことにはまったくこだわっていないんだ。大切なのは、これからの2年間だ。そのためにオレはあれだけ長い休養を取ったんだからな。もっと極端にいえば、80年代後半に備えるための休養だったのさ」
 
 生き馬の目を抜くがごとき激しい現在のテニス界で、後のことを考え、思い切って休養を取ったマッケンローの勇気をほめ讃えたい。それが実を結ぶにはもう少し時間がかかる。9月にはボルボ・ロサンゼルス、トランスアメリカ・オープンを連覇して、復活の兆しを見せているが、完全復活するには今年いっぱいかかるだろう。

 そして、勝負をかけるのは来年だ。来年こそ、きっと、ナンバーワンに返り咲くと信じる。“半世紀に一人のプレーヤー”とまで評された天才が“大いなる自信”を取り戻したのだから、必ずやってくれるはずだ。

 いずれにしても、“史上最強への道”を再び歩み始めたマッケンローによって、テニス界がもっとエキサイティングになることだけは確かなようだ。

文●立原修造
※スマッシュ1986年12月号から抜粋・再編集

【PHOTO】マッケンローetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
 

NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号