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海外テニス

欧州ジュニア大会で活躍中の“天才少女”宮澤紗希乃が海外の大手マネージメント会社と契約した理由<SMASH>

内田暁

2023.04.16

「スターウィング」ポルヤック氏(左)の協力を受け、父の光太郎氏(右)は、母の幸乃さんと共に娘の紗希乃(中)を支えていく。写真:内田暁

「スターウィング」ポルヤック氏(左)の協力を受け、父の光太郎氏(右)は、母の幸乃さんと共に娘の紗希乃(中)を支えていく。写真:内田暁

「松島コーチが、世界で活躍する選手の目安として、何歳くらいにヨーロッパやアメリカのこの大会で、これくらいの結果を残す……というロードマップを示してくれたことが大きかった」と、幸乃さんは述懐する。

 紗希乃本人はというと、物おじしない生来の性格ゆえか、海外遠征に行くたびに「楽しかった」と笑顔を輝かせ、「また行きたい」とせがむ。

 そして北米や欧州でも、松島コーチの示したロードマップ通りどころか、時にそれ以上の結果も残してきた。そのような娘の笑顔と活躍を見て、幸乃さんは思ったという。

「もし松島コーチが、一人の選手を子どもの時から最後まで育てたら、どういうふうになるのかな?」と。

「前例がないのなら、私自身がそれを見てみたいと思たんです」

 そんな好奇心にも似た希望を、幸乃さんは娘の成長に投影した。

 一方で父の光太郎氏には、「勉強は後からいくらでも出来る」という確信がある。

「でもスポーツは年齢的にも限りがある。だったら今はスポーツを優先すればいいし、テニスで奨学金を得てアメリカの大学に入る道もある」

 そのような“セカンドオプション”も見えているからこそ、娘の姿を見守ることができたのだろう。
 
 世界中から夢を抱く少年少女が集う欧米のジュニア大会には、海千山千のエージェントやスカウトたちも、世界各地から集う。昨年の夏の欧州遠征で、クロアチア開催のダブボウル11歳以下や、ブルガリア開催の12歳以下大会優勝をはじめ結果も残した紗希乃は、徐々に関係者たちの注目を集めた。

 同年11月のフロリダ遠征では、前出のファビオ氏をはじめ、多くの代理人やメーカーが接触を始めたという。そのなかから最終的に「スターウィング」が選ばれたのは、松島氏とファビオ氏の、長年の信頼関係があってのことだ。

 今回、「スターウィング」と契約したことにより、宮澤は海外遠征の経費面をはじめ、様々な支援を受けられることになる。

 ただ、「別に紗希乃がやることは今までと変わりはないですから」と、父の光太郎さんは言った。

「僕らがやるべきことは、彼女が帰ってくる場所を用意しておくだけです」

 それが、両親の想いだ。

 契約にまつわる説明やサインが終わった頃、宿舎のリビングルームのモニターに流れる映像は、いつのまにか今年の全豪オープン女子決勝のそれに移り変わっていた。

「いつか紗希乃も、ああいう場所に立つのかなぁ。ちょっと想像できないなぁ……」

 光太郎さんがふと、そう言い柔らかく笑った。

取材・文●内田暁

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