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国内テニス

伊達公子、杉山愛らのJWT50が創設したITF札幌大会を終えて。ジュニアたちの意識や態度が変わってきた!<SMASH>

内田暁

2023.08.23

札幌の3大会でトーナメントディレクターを務めた小畑沙織(左端)。「ジュニアたちは1週目と3週目ではボールの質が違った」と語る。写真:JWT50

札幌の3大会でトーナメントディレクターを務めた小畑沙織(左端)。「ジュニアたちは1週目と3週目ではボールの質が違った」と語る。写真:JWT50

 他にも今大会では、中学3年生の沢代榎音が3週連続で出場し、3大会目で初のランキングポイントを獲得。高校2年生の黄川田莉子も同じく3週に出て、3週目ではベスト8に進出した。

 この2人はいずれも、レジェンドたちから数々の助言を受けたことで、新たな視座を得たという。特に印象深い体験をしたというのが、黄川田だ。

「3大会目が始まる前に、杉山さんに『オフを取ったら?』って言われたんです。次の日が試合なので、普通に練習しようと思っていたんですが、杉山さんに言われて1日休んだら、良くなって」と黄川田。

 自分より年長者に囲まれて過ごした2週間は、本人が思っていた以上に心身の疲労が蓄積していたのだろう。恐らくはそれを察した杉山の、経験者ならではの的確な助言だった。

「ジュニアは、1週目より2週目、2週目より3週目というふうに、本当に成長が見られた。3週目は集大成という感じで、実力を……、もしくは実力以上の力を発揮して頑張ってくれた選手たちも数多くいるんです」

 そう言葉を弾ませ顔を輝かせるのは、今回の3大会でトーナメントディレクターを務めた小畑沙織である。元世界39位の小畑は、札幌市出身。故郷開催の大会で、若い力が翼を広げる瞬間を目の当たりにした事実は、小畑にとっても望外の喜びだったようだ。
 
「ジュニアの子たちは、明らかに1週目と3週目ではボールの質が違った。今ある技術や武器で組み立て、力を発揮できるようにもなった。そこは大会中に行なってきた、メンタリングやアドバイスが生きていると思います。

 若い選手たちは、人間的にもすごく成長した。最初は向こうから話しかけてくることはなかったし、挨拶もたどたどしかった子たちが、最後の方はしっかり話せるようになりました。試合後に自分からアドバイスを聞きにくるようになり、悩みや、考えていることも話してくれるようになった。私たちの答えも、これだけのキャリアがある人たちがいると、絶対に同じではない。それらを自分で整理し、しっかり取り入れてプレーにつなげているので、ジュニアの成長は、ほんっとうに早いなって改めて思います」

 若手の急成長に目を細める小畑は、「うらやましいですよ! 私もジュニアの時に、教えてもらいたかったですもん!」と快活に笑った。

 大会優勝者……という表層的な結果のみに目を向ければ、3つの大会を制したのはいずれも海外勢。

 だがその水面下で起きている変化は、近い未来に表面化し、多くの人の目に触れるに違いない。その時にきっと、人々は振り返るだろう。

「この隆盛は、あの時の札幌から始まった」と。

取材・文●内田暁

【PHOTO】伊達公子がグランドスラムを目指すジュニアたちを指導するキャンプの様子
 

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