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国内テニス

『SBCドリームテニスツアー・ファーストラウンド』優勝の菊地裕太!無名だった少年がなぜ強豪高経由で米大卒のプロになれたのか<SMASH>

内田暁

2023.07.31

高校卒業と同時に渡米したため国内での試合出場は4年ぶりとなる菊地裕太が『SBCドリームテニスツアー・ファーストラウンド』を制した。写真:(C)SBCDREAMTENNIS/長浜功明

高校卒業と同時に渡米したため国内での試合出場は4年ぶりとなる菊地裕太が『SBCドリームテニスツアー・ファーストラウンド』を制した。写真:(C)SBCDREAMTENNIS/長浜功明

「日本に置いてあった服が、全部、入らなくなっちゃって…」

 少し背を丸めてそう言うと、菊地裕太は、照れたような笑みをこぼした。

『SBCドリームテニスツアー・ファーストラウンド』(7月22日~23日/兵庫県・ブルボンビーンズドーム)会場で、彼が着ていたのは米カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)のチームTシャツ。それを指摘した時のことだ。

 テニス選手たちに『夢』を与えたい――。

 そのような願いの下に、『SBC Dream Tennis Tour』は昨年発足した。ランキングポイント等とは無縁の、純然たる賞金大会。夢があるのはその額で、12月開催の『ファイナルラウンド』優勝賞金は1,000万円。7月22~23日に開催されたのは、その予選ラウンド的な位置づけで、優勝者は100万円、準優勝者50万円の賞金と共に、ファイナルラウンドへの出場権を獲得できる。加えてプロ駆け出しの若手たちにしてみれば、ここで名を挙げることで、ファンやスポンサーの獲得にもつなげられるだろう。

 そんな夢への熱が立ち込める大会会場にあって、菊地は良い意味での“新参者”の空気をまとっていた。

 カルフォルニア大学のTシャツもその一つ。高校卒業と同時に渡米した菊地にとって、今大会は実に4年ぶりの日本での試合であった。

 1999年9月に岩手県で生まれた菊地は、高校時代にインターハイ3冠を成すなど、国内では名の知れたジュニア選手だった。ただ同期には、早々に世界を主戦場に活躍した、清水悠太や羽澤慎治らがいる。
 
 本人も「僕は本当に、中学までは全然名の知られていない存在でした」と、折り目正しい口調で明言。急激な成長期を迎えたのは、兵庫県の相生学院に進学してからだという。

 ここで純粋な疑問が生じる。中学まで無名だった菊地が、なぜテニスの名門高校から声が掛かったのか?

「それが、すごい面白い話でして」

 途端に人懐っこい表情になり、軽妙な口調で語り始めた。

「実は僕、岩手高校に進学すると90%くらい決めていたんです。もう親や先生ともそう話していたので。ところが相生学院のテニス部監督の荒井先生が、本当に毎晩電話かけてきてくださって。僕、当時は9時まで練習だったんですが、毎晩10時くらいに電話をくださり、『お前は絶対世界に通用するから! 相生学院に来い。とにかく1回でいいから練習を見に来い』と。『それで違うと思えば他に行けばいい。ただ絶対に、お前を世界一にしてやるから、来てほしい』と言ってくださったんです」

「それで実際に練習を見に行って、部員の方と練習試合をさせてもらったら、ボコボコにやられた。こんなすごい人たちがいるところでやりたい! と思ったのでお世話になることにしたんです」
 
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