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海外テニス

【プロの観戦眼27】人よりも関節が多いのかと思うほど柔らかいシナーのフォームに注目!~小山慶大<SMASH>

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2023.08.16

ヒジが先行してラケットが遅れてくるシナーのフォームはまるでムチのよう(2~3コマ目)。手首の使い方も柔らかく、インパクト前後でヘッドが鋭く返っている(4~5コマ目)。写真:真野博正、滝川敏之

ヒジが先行してラケットが遅れてくるシナーのフォームはまるでムチのよう(2~3コマ目)。手首の使い方も柔らかく、インパクト前後でヘッドが鋭く返っている(4~5コマ目)。写真:真野博正、滝川敏之

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがスゴイ!」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。

 第27回は「Fテニス」でジュニア育成に携わる小山慶大氏に話を聞いた。小山氏はヤニック・シナーの格段に“柔らかいフォーム”をぜひ注目してほしいと勧める。

「人よりも関節が多いんじゃないかと思うくらい、柔らかくラケットを扱うんです」と表現。どのショットでもそうだが、特にフォアハンドがその傾向が強いという。「テイクバックからフォロースルーまで、腕をムチのように使います」

 小山氏によれば、プレーヤーはボールを捉える際の腕の使い方が、「ムチ」のようなタイプと「棍棒」のようなタイプに分かれるそうだ。前者の代表がシナーで、後者にはチチパスやベレッティーニなどが当てはまる。

「ムチの打ち方は、力をそんなに使わなくても伸びのあるボールが行きます。込めている力以上の球威が出るので効率がいい。一方、棍棒タイプは込めた力の分だけボールが飛ぶので、把握しやすいという安心感があります」
 
 なぜムチだと見た目以上に球威が出るのかというと、“運動連鎖”が働くからだ。「肩、ヒジ、手首はもとより、肩甲骨、ヒザ、股関節まで、全てがしなるように動いて力を伝達していき、地面から得たパワーを滞りなくボールに注ぎ込めるんです」と小山氏。一見、フニャフニャした動きに見えて、実は理に適ったスイングなのだ。

 今度シナーやチチパスの試合をテレビ観戦する機会があったら、2人のスイングを見比べてみると面白いだろう。同じスピードボールであっても、力の加え方の違いが感じられるはずだ。

 ちなみに一般プレーヤーはどちらを真似るべきか、小山氏に尋ねてみると「どちらもありです」との答え。「楽にボールを打ちたい人はシナー、とにかく強く叩きたいならチチパスを参考にしましょう」。あなたはどちらのタイプ?

◆Jannik Sinner/ヤニック・シナー(イタリア)
2001年8月16日生まれ。188cm、76kg、右利き、両手BH。少年期はスキー選手としても有望で、13歳からテニスに専念。18年にプロ転向し、翌年には18歳でネクストジェンに優勝。22年からケーヒルに指導を仰ぎ、今季は自己最高ランキングの6位をマーク。ツアー通算8勝。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

【連続写真】ムチのように関節を柔らかく使ったシナーのフォアハンド「30コマの超連続写真」
 

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