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海外テニス

WTAと女子車いすテニスの共催は“世界初”!ジャパンOP決勝を戦った上地結衣と田中愛美がそれぞれの思いを語る<SMASH>

内田暁

2023.09.24

決勝を戦った田中(左)と上地(右)。家族や友人たち、多くのテニスファンが靭テニスセンターへ足を運んだ。(C)Getty Images

決勝を戦った田中(左)と上地(右)。家族や友人たち、多くのテニスファンが靭テニスセンターへ足を運んだ。(C)Getty Images

「数え切れないくらいいました。お客さんの半分くらいは、知っている顔じゃないかっていうくらいで!」

 どれくらいの数の友人や関係者が、今日の試合を見に来たのか――?

 会見でそう問われた時、それまでのやや厳しかった表情は一転し、溶けるような笑顔で声を弾ませた。

 9月10~17日に大阪市の靭テニスセンターで開催された“木下グループジャパンオープン女子”は、WTAツアーとITF車いすテニスが共催された、記念すべき世界初の大会である。冒頭に記したのは、その初代女王に輝いた上地結衣の言葉。兵庫県出身の上地にとって、関西地方での優勝は“故郷に錦を飾る”とも言える戴冠だった。

 大会はITF(国際テニス協会)仕切りの国際大会ではあるが、ニューヨーク開催の全米オープン翌週という厳しいスケジュールのため、海外勢の参戦はなし。断トツの第1シードに座した上地にとっては、目標は優勝というよりも、いかに幼少期から支えてくれた人たちに良いプレーを見せるか、そして、車いすテニスの魅力を日本の観客に示すか……にあったかもしれない。

 だからこそ、6-1、6-2の快勝にも関わらず、試合後の上地は自分に厳しい。

「試合の内容としては、たくさんのお客さんに来て頂けただけに良いプレーしたかったですけれども、田中選手もおっしゃったように、今の車いすテニスの良いパフォーマンスを見せられたかというと、自分としてはハテナな部分が正直ある」

 それが会見で発した、決勝を振り返っての最初の言葉だった。
 
 その思いは、上地と決勝を戦った田中にしても同じ。決勝戦後、オンコートで彼女が流した涙は、敗戦の悔しさよりも、足を運んだ人々に自身のベストパフォーマンスを見せられなかった悔いにあった。

 得意のスライスを用いた緩急が武器の田中から、その柔軟さを削いだ要因は、外ならぬその強い思い入れだったかもしれない。

「今回はあえて、色んな人に大会告知をした」と言い、実際に家族やSNSフォロワーも見に来ていたという田中は、その理由を次のように明かす。

「見られた時に緊張するのは、わかっていること。そのシチュエーションをあえて作り出すことによって、自分が緊張した中でどのようなプレーができるか。良いプレーはもちろん見せたいですけど、それ以上に、テニスに執着して勝つ姿を見せたかった」

 流した涙の内訳は、そのような葛藤にあった。
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