日本人選手の場合は所属契約での収入があるため事情が違う部分がありますが、他国の選手の多くは賞金で生計を立てているため、賞金の収入額は重要な意味を持ちます。やはり、賞金で生計を立てられてこそプロですし、それが選手の地位向上にもつながると思います。
現在の分配率は約15%とのことですが、この数字を見ると低いと感じます。プロ化になってから年々賞金額は上がっていますが、それはテニスの価値が上がってきた結果でしょう。
グランドスラムの優勝賞金が1億円、本戦出場で120万円ぐらいの時代がありましたが、今は優勝で4億円、本戦出場で800万円ぐらいもらえます。以前は上位選手への配分が大きかったですが、現在は下位の選手にも手厚くなってきました。
かつて一時代を築いた選手から見れば、現在の賞金は十分高いと思えるかもしれません。ですが、時代の流れに沿ってテニスの価値が上がることで賞金が上がるだけでなく、配分の割合も上がっていいと思います。今の選手は当然ながら昔と比較するのではなく、今を切り取って見ていますから。
ATP(男子プロテニス協会)、WTA(女子テニス協会)、グランドスラムの運営団体はそれぞれ選手の肖像権を使える権利を持っているので映像を使えます。一方で選手たち自身は大会期間中に選手に課せられていることは、メディア対応を含めて色々とあります。それに、テニスは個人スポーツなので、チームスポーツの選手に比べて、選手が支払うコーチへの帯同費はもちろん、飛行機、ホテル、食事など出費も多いのです。だからこそ、賞金の増額はしてほしいところです。
トップの上位選手は賞金以外にもスポンサー契約などもありますが、100位以下の選手は賞金をどれだけ得られるかで、キャリア存続の決断にもかかわってくるでしょう。分配率が上がることで賞金額が上がれば、今以上にキャリアが長くなり、テニス界に変化も起こるかもしれません。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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