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海外テニス

「公平な待遇を求める!」テニス四大大会に向けて選手らが「賞金割合の引き上げ」を求め書簡送付<SMASH>

中村光佑

2025.04.04

莫大な収益を上げる四大大会だが、選手に還元される割合は全体の2割程度と少ないため、一部の選手が待遇改善を求めている(写真はナバーロとルード)。(C)Getty Images

莫大な収益を上げる四大大会だが、選手に還元される割合は全体の2割程度と少ないため、一部の選手が待遇改善を求めている(写真はナバーロとルード)。(C)Getty Images

 毎年テニスファンを熱狂の渦に巻き込む世界最高峰の舞台、四大大会。観客動員数はもちろん、放映権料やスポンサー収入、チケット売上、会場内の物販や飲食など、通常のツアー大会とは一線を画すビジネス規模を誇り、各大会は毎年数億ドル規模の収益を上げている。

 ところが、その巨額の収益のうち、出場選手に還元される割合は限られている。例えば、昨年の全仏オープンの推定収益は3億3800万ユーロ(約544億円)だったが、賞金総額は5347万8000ユーロ(約86億円)で、全体のおよそ16%にとどまっていた。海外テニス専門サイト『UBITENNIS』など複数のメディアによれば、他の四大大会でも同様の傾向が見られるという。

 こうした現状を受け、男女ツアーのトップ選手約20名が連名で、四大大会において選手に分配される賞金の割合の引き上げを求める書簡を送ったと、仏大手メディア『レキップ』が報じている。

 最初にこの話題に言及したのは、現在開催中の女子ツアー大会「チャールストン・オープン」(3月31日~4月6日/クレー/WTA500)でベスト8入りした世界ランキング11位のエマ・ナバーロ(アメリカ)だ。

 当該書簡に署名したというナバーロはとにかく選手たちが公平に扱われることが重要だとし、次のように発言した。「他の選手と少し話をして、署名するのは良い考えだと思った。これまでの取り分の割合はある意味不公平だった。選手たちが団結し、公平な待遇を受けるよう求めるのは良いことだと思うわ」

 また女子ではジェン・チンウェン(中国/同8位)も書簡に署名したと言い、「全てのテニス選手にとってプラスになる」と賛同。

 一方でジェシカ・ペグラ(アメリカ/同4位)は「近いうちに詳細を知りたい」としつつ、「今はまだ多くは話したくないし、あまり詳しく話さない方が良いと思う」と慎重にコメントしている。
 
 男子では4月4日から2日間にわたって行なわれるエキジビションマッチ「アルティメット・テニス・ショーダウン」(フランス・ニーム/クレー)に出場する世界6位のキャスパー・ルード(ノルウェー)が、今回の書簡について言及。賛否の立場は明言しなかったものの、現在の四大大会の収益分配は「不公平」と断言し、バランスよく選手に還元するべきだと声高に主張した。

「詳しくは言えないが、トップ20の選手たちが四大大会に書簡を送ったのは事実なのかなと思う。そもそも多くの人は、四大大会の収益分配についてはほとんど知らないと思うが、実際に我々選手が受け取る金額は、大会が生み出す収益の平均15%程度に過ぎない。これは公平とは言えないだろう」

「NFL(米プロフットボールリーグ)やMLB(メジャーリーグ)、NBA(米プロバスケットボール)などの世界的なスポーツリーグでは、収益の約50%が選手に還元されている。それが理想の形だろう。現実的にはそこまでは無理かもしれないが、少しでも近づけることができれば、それだけで大きな前進だ。たった数パーセントの変化でも大きな違いを生む」

「年間を通して何百万ドルも稼ぐ選手ばかりではない。多くの選手にとっては、収入がたった数百ドル、数千ドル増加するだけでも生活に大きな影響を与える。例えば、USTA(全米テニス協会)と全米オープンは年間5億ドル(約730億円)以上の収益を生み出しているが、そのうち選手に分配しているのは約6500万~7000万ドル(約95億~102億円)程度だ。選手たちは大会と同じくらい重要な存在なのに、たった15%程度しか分配されないのはおかしいと思う」

 なお、送付された書簡について四大大会側はまだコメントを出していない。今後の動向に注目が集まる。

文●中村光佑

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