先日行なわれたテニス四大大会「全仏オープン」の男子シングルスで大会連覇を果たしたカルロス・アルカラス（スペイン／世界ランキング２位）のコーチを務めるホアン・カルロス・フェレーロ氏（スペイン／45歳）が決勝戦後の記者会見に出席し、敗戦寸前から驚異的なメンタルの強さを見せて逆境を乗り越えた愛弟子を手放しに称賛した。

　ディフェンディングチャンピオンとして今大会に参戦した22歳のアルカラスは苦しい試合を勝ち抜き、２年連続で決勝に進出。現地６月８日に行なわれた決勝では宿命のライバルとしてしのぎを削ってきた23歳の王者ヤニック・シナー（イタリア／同１位）と対戦し、２セットダウンかつ３本のチャンピオンシップポイントを握られたところから大逆転。ファイナルセット10ポイントタイブレークにまでもつれ込む全仏オープン決勝史上最長の５時間29分の死闘の末にアルカラスが4-6、6-7(4)、6-4、7-6(3)、7-6[10-2]で制し、殊勲のタイトル防衛を成し遂げた。

　2019年からおよそ６年にわたってアルカラスを指導しているフェレーロ氏は「私が彼のコーチになってから、彼は一度も試合を途中で投げ出したことはない」とは言うが、今回ばかりは四大大会決勝という最高峰の舞台で、世界１位を相手に絶体絶命の状況から這い上がった愛弟子に驚かされたと明かす。

「彼は常に最後まで戦ってきたし、今日も例外ではないとわかっていた。今日の試合は本当に精神状態やプレーの質を維持するのが難しかったはずだが、それでも彼が最後まで諦めずに戦ってくれるとわかっていた。一方で正直なところ、今日彼が成し遂げたことには驚いている。本当に難しい局面だったからね」
  　その上で改めて同氏はアルカラスが「メンタル面で大きな成長を見せた」と称賛する。

「私は彼に『よくやった、おめでとう』と伝えた。あの戦う姿勢、献身ぶり、どんな時も信じ続けること...それが我々チームが彼に求めていたことだ。今日彼がやり遂げたことは、決して簡単なことではない。私自身もプロ選手としての経験があるから、今日の彼の偉業がどれだけ困難なことだったかはわかる。本当に、頭が下がる思いだ」

「対戦相手はシナーで、彼は一瞬たりとも気を抜かせてくれない。そんな相手に、敗北寸前から自分を信じ続けて勝ち切った。今日は彼がメンタル面でさらに一歩成長した日だったと思う。そしてこの試合の経験は、今後の彼にとって非常に大きな財産になるはずだ。思うようにプレーできていない時や負けている時でも、自分を信じて戦い抜く力。それが彼をさらなる高みへと押し上げてくれるだろう」

　これでアルカラスは早くも四大大会５勝目。大きなケガさえなければ、今後もまだまだタイトルを積み重ねていきそうな予感だ。約３週間後に開幕する「ウインブルドン」（６月30日～７月13日／イギリス・ロンドン／芝）での大会３連覇も大いに期待したい。

文●中村光佑

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