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モータースポーツ

「シュワンツがしたようにスズキをトップに押し上げたい」MotoGP新王者ミルが語るレジェンドへの思い

甘利隆

2020.11.19

ウンチーニとともに初のチャンピオンに輝いたことを喜ぶミル。(C)Getty Images

ウンチーニとともに初のチャンピオンに輝いたことを喜ぶミル。(C)Getty Images

 MotoGP・14戦バレンシアGPで、ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が、MotoGPクラス参戦2年目にして初のチャンピオンに輝いた。

 レース後、マシンを保管するパルクフェルメにライバルたちやチーム関係者がこぞっって祝福へと駆けつける中に、現在MotoGPセーフティーオフィサー兼サーキット・インスペクターを務めるフランコ・ウンチーニが加わっていたことに感慨を覚えたファンも多いことだろう。
 
 ウンチーニはRG-ガンマ500を駆り、当時最高峰だった500ccクラスでタイトルを獲得したスズキのOBだけに、例年のチャンピオン決定シーンより感情が高ぶったのかもしれない。

 1960年のマン島TTに初めて挑戦したのを皮切りに、今年で世界GP参戦60周年、そして創業100周年を迎えたスズキは、これまでバリー・シーン(1976年・1977年)、マルコ・ルッキネリ(1981年)、ウンチーニ(1982年)、ケビン・シュワンツ(1993年)、ケニー・ロバーツ・ジュニア(2000年)と5人の最高峰クラス王者を輩出してきたが、ミルはアニバーサリー・イヤーに6人目としてその名を連ねた。

 ロバーツが戴冠した際は、まだ最高峰クラスが500ccだったため、MotoGPクラスとなってからは初めての王者となる。

「新型コロナウイルスの影響で家賃を払えない人、食べ物に困っている人にかかるのが本当のプレッシャー。僕への重圧は悪いものではない」とコメントしていたが、さすがに王手をかけて臨んだレースでは緊張があったのか、「理由は正直わからないんだけど、タイムを上げることができなかった」と語り、課題の予選は12番手。だが、決勝ではタイヤが温まる後半に順位を上げるいつもの展開で7位でフィニィッシュ。前戦のヨーロッパGPに続く2勝目とはならなかったものの、史上7番目となる23歳と75日の若さでタイトルを決めた。
 
 なお、前回2位のチームメート、アレックス・リンスも予選は14番手と奮わなかったが、4位でチェッカーを受け、残る最終戦ポルトガルGPでランキング2位を狙う。

 長らくスズキのアイコンだったシュワンツもタイトルの行方に注目しており、「素晴らしい日だった。私も本当に特別な気持ち。スズキにとっては20年振りだが、彼らは去り、戻って、信じられない成果を挙げた。私もミスを犯したばかりにチャンピオンシップを逃したことがある。(マルク・マルケスが不在でも)タイトルの正当性に疑う余地はないよ」とコメントしている。

 新チャンピオンは以前、このように話している。

「ケビン・シュワンツがしたようにスズキをトップに押し上げたいんだ。いつか彼のようになりたい。光栄なことに彼は何回かお祝いのメッセージを贈ってくれた。チャンピオンになったらケビンと一緒にディナーを取ってみたいね!」

文●甘利隆
著者プロフィール/東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter:ama_super

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