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「チョレイ」を封じられ全日本で精彩を欠いた張本智和。東京五輪への課題はリズムと体力づくり!

佐藤俊

2021.01.29

全日本選手権では「チョレイ」が封じられベスト8で姿を消した、張本智和。(C)Getty Images

 全日本選手権、優勝候補の張本智和はベスト8で及川瑞基に1-4で敗れた。

 4年ぶりのベスト4入りを逸したその表情は、敗れた悔しさももちろんあっただろうが、すべてを出し切って疲労困憊という体だった。

 前日は、3試合を戦った。

 3試合目のカットマン御内健太郎とのゲームに苦戦し、4-3というフルゲーム、1時間17分という長時間の試合になった。その影響もあったのだろう。

 及川に敗れた後、張本は、こう語っていた。

「筋肉痛も残っているし、疲れていた。負けた悔しさより疲れで今、喜怒哀楽を出せる感じではない」

 若い張本でも1日もない時間では体力の回復が十分ではなかったのだろうが、王者になるためには体力が足りなかったともいえる。

 また、コロナ対策として、無観客、さらに飛沫によるコロナ感染予防の観点から「不要な声出しや大声を出さない」ことが選手に求められていた。御内との試合でも時々、「チョレイ」が出て、審判に注意されたことがあった。

 及川とのゲームでは、前日に注意されたことが引っ掛かっていた。

「昨日、声を出しすぎてしまったという指摘があった。今日は抑えようと思ったが、どうしても自分のプレースタイルではないので、乗り切れなかった」

 張本がそう述べたように、「チョレイ」はただ気合を入れるだけの言葉だけではない。卓球での自分のリズムを作る上で非常に大事な要素になっている。
 
 一流のアスリートは高い技術や身体能力を保持しているが、それを試合中いかに100%発揮するかに腐心している。そこでこだわるのが、自分のリズムだ。「間」と置き換えてもいいかもしれない。一流の投手のピッチングは非常にリズムがいい。マラソンランナーも自分のリズムを大事にして走っている。リズムが崩れるとコントロールに誤差が生じたりするし、体力を余計に使ったりする。そこで野球では痛打され、マラソンでは粘り切れずに順位を落としてしまう。

 張本の「チョレイ」は、そのリズムを整えるものだ。

 ラリーが続く中、得意のフィニッシュを決め、狙い通りにポイントを取って雄たけびを上げ、自分をリズムに乗せていく。そうして攻守に勢いを持たせる。それが張本の戦い方だ。

 しかし、今回、張本自らが「乗り切れなかった」という発言をしたように、声を失って戦うことは、今後に不安を残すことになった。

 このままコロナ禍の影響を受けて東京五輪を迎えると、声に関して自粛要請が出されてもおかしくない。そうなった場合を想定し、大声ではなく、ぶつぶつ独り言のように呟いて集中力を高めていくか、それともまったく別のやり方でリズムを作っていくことが求められる。これは、大きな課題のひとつになるだろう。