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マラソン・駅伝

なぜ「実業団」は消えていくのか?コロナ禍で過渡期を迎える企業スポーツのあり方を考える

酒井政人

2021.03.09

実業団日本一を決めるニューイヤー駅伝の様子。写真:産経新聞社

実業団日本一を決めるニューイヤー駅伝の様子。写真:産経新聞社

 横浜DeNAランニングクラブが2021年3月末で解散する。同クラブは瀬古利彦らを輩出した名門・エスビー食品の選手・スタッフを受け入れる形で2013年1月に創設。翌年、ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)に初出場すると、2016年には5位に食い込んだ。しかし、2018年10月に駅伝からの撤退を発表。2021年度以降は、「世界選手権などの国際大会等での活躍を目指す選手に対し、それぞれの競技活動をサポートする新たな体制」に変更する。

 DeNAによると、「今回のランニング事業の新体制立ち上げは、コロナ禍の影響で弊社スポーツ事業が厳しい状況にある中で、今後もDeNAとして中長期的にランニング競技のサポートを続けるため」だという。スタッフ2人と選手3人(湊谷春紀、鬼塚翔太、松尾淳之介)は4月1日付けでNTT西日本に移籍。大半のメンバーがクラブを去ることになる。

 コロナ禍で営業利益が大幅に下落している企業は少なくない。スズキや日清食品グループのように駅伝から撤退する企業や、陸上部自体を廃部・休部する企業が今後も出てくる可能性があるだろう。

 会社の予算を使い、勤務時間内にトレーニングが認められている「実業団」という形態は日本独自のものだ。世界のアスリートは「プロ」がスタンダードになる。近年は大迫傑、神野大地、福田穣のように実業団を退社して、プロに転向する選手も出てきているが、その数は圧倒的に少ない。
 
 実業団に所属している選手は大きくふたつに分類される。ひとつは「正社員」として入社して競技を続ける者。もうひとつは「契約社員」として競技に集中する者だ。

 前者は競技を引退後も会社に残り、サラリーマンを続けることができる。一方、契約社員は社業を免除されるだけでなく、正社員よりも給料は高い。しかし、競技引退後は基本、退社となる。DeNAの場合、選手は全員が契約社員だった。

 契約社員を採用しているチームは多くなく、近年は「正社員」として競技を続ける道を選ぶ選手が大半だ。なお正社員といっても競技と社業のバランスは会社によって大きく異なる。ほとんど社業がない会社もあれば、競技と仕事を両立する「デュアルキャリア」を推し進めているホンダ(基本8時半から14時までは社業)のような会社もある。またフルタイムに近い形で働き、競技に取り組んでいる会社もあるのだ。ただし、長距離選手は夏季や試合前の「合宿」で職場を長期間離れることが多いため、責任ある仕事を担うのは難しい。
 

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