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ラグビー

「勝って学ぶ。それこそが経験」オールブラックス、名将ハンセンの名言にシビれた【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.10.20

今大会終了後の勇退を表明しているハンセンHC(右)。W杯3連覇で有終の美を飾れるか。(C)Getty Images

今大会終了後の勇退を表明しているハンセンHC(右)。W杯3連覇で有終の美を飾れるか。(C)Getty Images

 攻めては圧巻の7トライを叩き出し、守っては洗練された組織美で敵にいっさいの隙を与えず、焦燥とミスを誘発した。

 地球上にオールブラックスを打ち負かすチームはいるのか。そう感じさせるほどの圧倒ぶりだった。

 土曜日に東京スタジアムで行なわれたラグビーワールドカップ準々決勝で、ニュージーランド代表はアイルランドと対戦。ここ3年のテストマッチで2度敗れている相手に対して、のっけから猛ラッシュを仕掛け、前半半ばまでにふたつのトライを含む17得点を稼ぎ出し、俄然試合を優位に進める。その後も攻守両面で凌駕し、みるみるうちにリードを広げ、終わってみれば46対17の大差勝ち。7トライの暴れっぷりで、難敵を豪快に退けた。

 まさにここからが本番とばかりに、プール戦4試合から一気にギアを上げてきたオールブラックス。チームを率いるスティーブ・ハンセンHCは普段通りに相手チームを称え、淡々と試合を分析し、冷静に足下を見つめた。

 アイルランド戦後の記者会見、その席上からハンセンHCが発した言葉に唸らされた。本人にしてみればシンプルに持論を明かしているだけなのだろうが、実に論理的で、話す順序が上手く分かりやすい。だからだろう。強めの言葉を使っても不快感がなく、聞き手の心にストンと入り込んでくる。

 例えば、今日の勝因のひとつは「ディフェンス」にあったのかと問われ、指揮官はオマケを付けながらこう答えた。

「今日のディフェンスは確かに素晴らしかった。ひとつのゲームにおいてディフェンスは、当然50%の割合を占める。もし選手個々の精神的な部分に限るなら、その影響力は90%にも至るだろう。規律を保ちながら、タックルを仕掛けて敵のエラーを引き出し、やがて精神的優位に立つ。そしてそれによって選手たちは、トップの力を発揮できるようになる」
 東京スタジアムのスタンドには緑色のジャージが溢れ、途轍もない大音量の声援がピッチに降り注いだ。オールブラックスが誇る“ハカ”の際には、アイルランド・サポーターが応援歌の大合唱を繰り広げたため、観衆は魂の雄叫びをいっさい聞くことができなかった。ハンセンHCは少し冗談交じりに、次のような説明を加えている。

「アイルランドの人びとは世界中を飛び回っていて、どんなパーティーにも参加する。今日もその声はよく聞こえていたよ。ニュージーランド人はパーティーが嫌いというわけではないんだけど、彼らに比べれば静かだね。大事なのは、ああいう状況下でもホームのような雰囲気を感じられるかどうかだ。正しい試合運びをすれば、観客だってコントロールできるもの。それはワールドカップだけでなく、どこでどんな試合をしても変わらない。今日、選手たちは正しく振る舞った。(アイルランド・サポーターの)歌声も、途中で止まったかと思う」
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