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【名馬列伝】『みじかくも美しく燃え』たサイレンススズカ。“伝説“から“悲劇“へと急転した、鮮烈すぎる2年弱の競争馬生

三好達彦

2021.05.23

悲運の骨折に見舞われたサイレンススズカ。あのアクシデントがなければ、「史上最強・最速の中距離馬」になれたかもしれない。写真:産経新聞社

悲運の骨折に見舞われたサイレンススズカ。あのアクシデントがなければ、「史上最強・最速の中距離馬」になれたかもしれない。写真:産経新聞社

 現役生活は2年にも満たず、手にしたGⅠタイトルはわずか一つにすぎない。それでもいまなおファンの熱烈な支持の声は止むことがなく、関係者のなかにも「史上最強・最速の中距離馬」になれたのではないかと評価するものが少なくない。それが稀代のスピードスター、圧倒的な速さでレースを、そして”馬生”を駆け抜けたのがサイレンススズカである。

 彼の現役生活は大きく二つに分けられる。

 第一幕は、驚愕のデビュー戦から、紆余曲折を経ながら大敗を喫したマイルチャンピオンシップまで。第二幕は鞍上に武豊騎手を迎え、類稀なスピード能力を開花させた香港国際カップ以降である。

 サイレンススズカのデビューは1997年2月1日、京都での新馬戦(芝1600m)だった。

 追い切りで抜群の動きを見せていたことから単勝オッズ1.3倍という高評価を受けてゲートに入ると、スタートから他馬とのスピードの違いで自然と先頭に立つ。鞍上が手綱を抑えたまま徐々に後続との差を広げると、2着に7馬身(1秒1)も突き放してゴール。走破タイムの1分35秒2も当時としては破格のもので、「この馬でクラシックは決まった」の評判はあっという間に関東の関係者の間にも広がった。

 しかし、続く弥生賞(GⅡ)でゲートの下へ潜って外枠発走になるなど、サンデーサイレンス産駒特有の気性の難しさを見せて8着に敗れた彼は、その後2勝を挙げて日本ダービー(GⅠ)にまで駒を進めたものの、9着に大敗。秋も神戸新聞杯(GⅡ)で2着に健闘するも、天皇賞(秋)、マイルチャンピオンシップ(ともにGⅠ)で古馬の壁にも跳ね返されて連敗する。

 あとになって分かることだが、序盤を抑え気味に進めることを旨としていた陣営の狙いもあって、ここまでのサイレンススズカは天性のスピードを抑え込まれ、消化不良のレースを続けていたのである。
 
 転機は思わぬところで訪れた。

 12月の香港国際カップ(GⅡ、芝1800m)への出走を予定していたサイレンススズカは、「以前から乗りたいと思っていた」という武豊からのラブコールを受け、新たに鞍上へと迎える。このレースで武はサイレンススズカを抑えようとはせず、行く気に任せて大胆な逃げを打たせると、ゴール前でわずかに差されたものの、0秒3差の5着に粘り込む。

 武と調教師の橋田満は、このレースぶりに自信を持ち、彼が走りたいままに逃げさせることを信条とすることに決めた。

 その決断が功を奏し、輝くターフを自由に駆けるようになったサイレンススズカは翌年、バレンタインステークス(OP)、中山記念(GⅡ)、小倉大賞典(GⅢ)をラクラクと逃げ切って3連勝を達成。そして”史上稀に見る衝撃”との呼び声も高い金鯱賞(GⅡ)へと駒を進める。
 
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