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稲見萌寧はなぜ急激に強くなったのか?コーチが見た“明らかな変化”と根底にある“完璧主義”

山西英希

2021.05.24

通算7勝、今年だけで5勝をもぎ取っている稲見。その勢いはとどまるところを知らない。(C)Getty Images

 国内女子ツアー『中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン』の大会最終日、稲見萌寧が4バーディ・ノーボギーの「68」で回り、通算15アンダーで今季6勝目、ツアー通算7勝目を飾った。

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 36ホールの短縮競技になった今大会だが、初日に「61」をマークし、2位以下に5打差をつけた稲見に追いつくものは誰もいなかった。最終的に6打差をつけての優勝となったが、2位以下の選手にしてみれば、稲見の背中すら見えなかったのではないか。

 今年だけの戦績でいえば、12戦5勝と尋常ではない勝率を叩き出している稲見。すでに9700万円以上の賞金を稼いでおり、2020ー21年シーズンの賞金ランキングでも1位の小祝さくらとの差は1000万円を切っている。このペースがシーズン終了まで続くとは思えないが、賞金女王を狙えるだけの実力が十分あることは誰も否定しないだろう。

 なぜ稲見は急激に強くなったのだろうか。彼女をコーチとして2年7か月前から指導し、今大会では帯同キャディを務めた奥嶋誠章コーチによれば、「ショット自体は昨年までと大きく変わっていない」という。「昨年と明らかに異なるのはパッティングの精度です」と語るのだ。
 
 確かに、昨年は1.80だった平均パット数が今年は1.75まで上がっている。今大会でも初日にツアー新記録となる13個のバーディを奪ったが、1.5メートル以下のバーディパットは2個しかなかった。ほとんどが1ピン以上の距離を沈めたものだ。

 ただ、一朝一夕でパッティングが劇的に向上するはずもない。稲見自身は「ショットとパットの練習量の割合を9対1から8対2に変えただけ」と語っていたが、本来の練習量が多い稲見だけに、1割増えただけでもかなりの時間をパッティングに費やしてきたことは十分予想できる。

 今年の『ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ』でも、ラウンド後に遅くまで練習グリーン上でボールを転がしていた。ようやく練習を終えてクラブハウスへ戻るときに、知り合いから「お疲れ様」と声をかけられていたが、その声が最初は耳に入らず、どこかうつろな表情を浮かべていた。すぐに我に返ってあいさつしていたが、そこまで自分を追い込んでいるのかと思ったほどだ。
 
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稲見を突き動かすものとは?