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格闘技・プロレス

“絶対有利”のダスマリナス戦の先に井上尚弥はなにを見据えるのか「ここがゴールではない…」【現地発】

杉浦大介

2021.06.19

ダスマリナス(右)とのタイトルマッチを控える井上尚弥(左)。その表情からも並々ならぬ自信が感じ取れる。(C)Getty Images

ダスマリナス(右)とのタイトルマッチを控える井上尚弥(左)。その表情からも並々ならぬ自信が感じ取れる。(C)Getty Images

 モンスター絶対有利──。

 現地時間6月19日、ネバダ州ラスベガスにあるバージンホテルズ・ラスベガスで開催されるWBAスーパー、IBF世界バンタム級タイトル戦を展望するなら、それ以外の答えは弾き出せない。それが現実である。

 プロデビュー以来20戦全勝(17KO)。現王者の井上尚弥(大橋ジム)は、いまでは全階級を通じてもトップ3に入るエリートチャンピオンとして評価されるに至った。一方、挑戦者のマイケル・ダスマリナス(フィリピン)は、戦績こそ30勝(20KO)2敗1分と立派だが、強敵との対戦はほぼ皆無だ。

 映像を見ても井上に警戒を促すほどの実力があるようには見えず、“長身のサウスポー”という身体的特徴から連想させるほど、やりにくさがあるボクサーにも見えない。順当ならば、スピード、パワー、スキルのすべてで上回る井上が中盤までにKO勝利を飾るのではないか。

「今回ラスベガスでの戦いも2回目になります。気負いなく練習してきたすべてのテクニックだったり、そういったものを見せられたらと。あえてKO勝ちは狙わないで、流れの中で倒すというのを課題としています」

 17日に行なわれた試合前の最終会見後、日本メディアに囲まれた井上が述べた自然体のコメントは頼もしさすら感じさせた。

【動画】渾身のストレート炸裂! 世界が驚いた井上尚弥の「ヘッドショット」シーンはこちら
 順風満帆に見えるなかで、あえて無理やりにでも不安材料を探すとすれば、今回の指名戦があまりにも“通過点”として認識されすぎてしまっているように感じる点か。17日の会見でも、司会者からの最初の質問はダスマリナス戦に関するものではなく、「4団体統一を目ざす意味は?」だった。プロモーション活動も井上が絶対の中心であり、米国内でもダスマリナスが取り上げられた記事などはほとんど見かけない。

 もちろん冒頭で述べた通り、これほど実力差があると見られるタイトル戦なら、当然だろう。ただボクシングに限らず、先々のシナリオを考えすぎた選手、またはチームには、死角が生まれやすいものである。

「私の前戦も同じでした。イノウエとのリマッチ実現が希望でしたが、その前に目の前の相手に集中せねばなりませんでした。彼も同じように、私との再戦を楽しみにしてくれているのかもしれませんが、今週末、まず別の仕事をやり遂げなければいけないのです」

 先日、WBC世界バンタム級王座を奪還したばかりの井上の宿敵、ノニト・ドネアも先を見据えながらの戦いの難しさをそう述べていた。今後、ドネア、WBO同級王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)との統一戦を望む井上が集中力を欠き、攻め急ぐようなことがあれば、伏兵ダスマリナスの不用意なパンチを浴びる可能性もゼロではなくなるかもしれない。
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