ウクライナの英雄の凄みを見た。

　現地時間６月26日、ラスベガスで行なわれたノンタイトル12回戦で元３団体同級統一王者ワシル・ロマチェンコ（ウクライナ）に挑んだWBO世界ライト級５位の中谷正義（帝拳）は、９回TKO負けを喫した。
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　惜しくも大番狂わせとはいかなかった。初回から猛攻を仕掛けたロマチェンコに対し、粘り強く応戦した中谷だったが、５回終了間際にクリンチをきっかけにダウン。その後、何とか盛り返したが、９回にふたたび連打を浴び、レフェリーが試合を止めた。

　昨年10月に行なわれたテオフィモ・ロペス（アメリカ）との同級４団体王座統一戦で判定負けを喫していたロマチェンコ。ノンタイトルではあったが、いわば再起戦に勝利した格好だ。

　そんな33歳の貫録の勝利に現地でも反響が相次いでいる。米放送局『CBS』は、「ナカタニはボロボロになったが、９回まで気力を振り絞った」と中谷の気骨を評したうえで、「ロマチェンコの支配的な戦いは圧巻だった」とレポートした。
  「ロマチェンコはスリル満点のボクシングで、ナカタニを支配した。初回に頭がバッティングして出血するアクシデントはあったが、そこからの戦いは全てウクライナの精密機械がコントロール。５回から顔面が腫れ始めたナカタニに対し、強烈なパンチを打ち込み続けて、一切寄せ付けなかった」

　また、アメリカ最大級のネットワークを誇るスポーツ専門局『ESPN』は、「ナカタニに見事なパフォーマンスを披露したロマチェンコは、まるで王座にいるかのような強さだった」と絶賛。そのうえで本人のコメントを紹介した。

「勝てたことが何よりも嬉しい。この試合に向けて、チームで練ってきた戦略が全て機能したから勝てたんだ。もう俺は軌道に乗ったよ。誰もがこの勝利を見て、ロペスとの再戦を待ち望んでいるはずだ。再戦しようじゃないか。12月、１月、２月。いつでもいいからやろう」

　衝撃的な敗戦から約半年で見事に立ち直ってみせたロマチェンコ。中谷にとっては悔しい白星となったが、ウクライナの英雄は強かった。

構成●THE DIGEST編集部