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来日取材中のスペイン人記者が明かした「本音」。“理解に苦しむ”無観客と行動制約、そしてサービス精神に何を想うのか【東京五輪】

セルヒオ・サントス

2021.07.31

史上初の無観客開催となった東京五輪について、来日取材するスペイン人記者が本音を明かした。(C)Getty Images

史上初の無観客開催となった東京五輪について、来日取材するスペイン人記者が本音を明かした。(C)Getty Images

 無観客での大会開催は正直理解に苦しむ。直前に日本対スペインのテストマッチが有観客で開催されただけになおさらだ。EUROで各自が感染防止策を徹底し、慎重な行動を心がければ、感染の急拡大に繋がらないことは実証されている。

 もっとも大会の性質上、大きな違いがあるのも事実だ。オリンピックはたくさんの競技が行なわれる。サッカーのようにオープンな環境で開催され、観客数の上限を定めればソーシャルディスタンスが守りやすい競技ならまだしも、規模の大きくないホールの場合、十分な感染症対策を講じるのは極めて困難だ。そんななか、サッカーだけ例外として扱うのは難しかったのだろう。そう考えるとロジカルな決断だと思う。

 記者の立場から言わせてもらえれば、無観客のスタジアムで取材をするのはやはり味気ない。もちろんそれは選手たちにとってはなおさらだろう。

 わたしが取材しているU-24スペイン代表の選手たちは、一生に一度のこの大会にかけている。それだけに観客が見守るなかで試合をさせてあげたかったという思いは強い。無観客での開催はやはり寂しく、わたしの場合は特に数週間前までEUROを取材していたため、時間が逆戻りしたかのような錯覚さえ覚える。
 
 ただそれ以上に疑問に感じることがある。海外から訪れた人間に対して課される一連の行動制約だ。我々スペイン人記者は、ワクチンを接種し、なおかつ出発する92時間前、72時間前に2度のPCR検査を受け、その陰性証明書を持参のうえで来日している。

 加えて入国後も最初の4日間、PCR検査を受けた。それでも14日間、仕事(練習と試合、それも専用タクシーでの移動だ)と1日15分間に限っての買い物以外は外出が許されていない。パンデミックが発生し、スタジアムで再び取材ができるようになって以来、記者たちは感染症対策に率先して取り組んできた。それが人々の健康、競技の安全な開催に繋がるのだから当然だろう。

 さらに前述したようにワクチンを接種し、PCR検査も受けている。外出する際には、必ずマスクを着用している。つまり我々はよりコントロールされた立場にあると言える。もちろんそれでも周りの人を感染させるリスクはゼロではないが、少なくとも一般の日本人よりは可能性が低いはずだ。

 そんななかで、どうして他の日本人と同じように外出・外食できないのか、どうしてここまで厳しい規則の下に置かれるのか、という思いがないわけでない。ただそれは不満ではなくあくまで疑問であり、それも記者としてオリンピックというビッグイベントを現地で取材できる喜びのほうが大きく勝っている。
 
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