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角田裕毅の置かれた「過酷な状況」に“偉大な先輩”佐藤琢磨が理解を示す 「ユウキは最速の同僚と戦っている」

THE DIGEST編集部

2021.08.12

無謀なレースで苦言を呈されることもある角田。日本の俊英レーサーのルーキーイヤーについて佐藤が語った。(C)Getty Images

 今季、スクーデリア・アルファタウリからF1デビューを飾った角田裕毅は、ここまで11レースを消化。5戦で入賞(10位以内)を果たし、計18ポイント(20人中13位タイ)を記録している。

 一方で、第2戦エミリア・ロマーニャ・グランプリで最初のクラッシュを喫して以降、強引な突っ込みやミスで自らチャンスを逸してしまうケースも少なくなく、各方面から苦言を呈され、メディアからは早くも来季のシート喪失すら懸念されることもあった。

 このような浮き沈みを経験している21歳のルーキーについて、日本人F1ドライバーの先輩が言及した。2000年代にジョーダン、BARホンダ、スーパーアグリで最高峰レースに参戦して2004年には日本人2人目の表彰台(3位)を達成した佐藤琢磨だ。

 2010年からは米国インディカーに活躍の舞台を移し、2017、20年に伝統のインディアナポリス500を制した、日本レース界屈指の実績を持つ44歳の鉄人は、『IN THE FAST LANE』のポッドキャストに出演した際に、「ユウキは驚異的なスピードを持っている。そのことに疑いはない」と、レーシングドライバーとしての資質を絶賛。「F1で成功する大きな可能性を秘めている」と、後輩に対して期待を込めて語っている。

 同時に「とても速い男だが、まだ21歳。まだまだ経験を積む必要がある」とも指摘。今季開幕前の合同テストで各チームに与えられた時間はわずか3日。年々、ルーキーがF1に慣れるための時間は削られる一方である。佐藤は、「僕らの頃はほぼ毎週、冬のテストがあり、(スペインの)バルセロナやヘレスに行ったものだ。僕らだけでは消化できず、テストドライバーも導入されたほどで、現在と比べたら10倍はラップを重ねたと思う」と振り返り、現在の状況の厳しさを強調した。
 
 さらに「ユウキは非常に大変な時期を過ごしているが、環境に慣れれば、彼は自信を取り戻し、幾つか素晴らしいレースを披露した後、日本GPで多くの観衆の前で走ることができるだろう。僕が2002年にそうだったように」とポジティブな展望を示した佐藤は、また角田が他のルーキーに比べても、より過酷な状況にあると指摘する。

「ミック・シューマッハー(ハース)は、ニキータ・マゼピンとルーキー同士で戦っている。一方、ユウキは最速のヤングドライバーのひとりであるピエール・ガスリーと戦わなければならない。F1では、チームメイトこそが自分の力を測る唯一の物差しだと思う」

 優秀なチームメイトを持つがゆえに、彼との比較によって外部からはその能力に対して厳しい評価を下されてしまう角田の苦労を、偉大な先輩は理解している。佐藤自身もBARホンダ時代は、後にワールドチャンピオンにまで昇り詰めるジェンソン・バトンの存在によって強いプレッシャーを感じ続けたことだろう。

「スピード、安定感、強さと、ユウキは全てを持っている。我々は辛抱強く待ち、彼をサポートする必要がある」と訴えた佐藤。彼は、角田が着実に成長を遂げ、自身の記録を抜き去ってくれることを期待していることだろう。

構成●THE DIGEST編集部