ラグビー

「オールブラックス戦の負けが我々を…」世界王者・南アフリカの成長を促した“お粗末な完敗”【ラグビーW杯】

川原崇(THE DIGEST編集部)

2019.11.03

攻守両面で抜群の連動性を誇示し、勝負所で一気に畳みかけた南アフリカ。史上初の「黒星を喫した王者」が誕生した。(C)Getty Images

 7万を超える大観衆の眼前で、スプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)が世界の頂点に返り咲いた。

 土曜日に横浜国際総合競技場で行なわれたラグビーワールドカップ決勝、イングランド戦。互いにPGを決め合うジリジリした展開のなか、南アフリカは強力なディフェンスとスクラムでアドバンテージを握り、後半にふたつのトライを決めて一気に畳みかけた。32対12で見事ファイナルを制し、3大会ぶり3度目の世界一に輝いたのだ。

 最初の優勝が1995年大会で、その次が2007年、そして今回が2019年と、12年周期でのワールドカップ制覇が話題となっている南アフリカだが、もうひとつ新たな記録を打ち立てた。過去8大会のチャンピオンはすべてプール戦から全勝を収めて優勝を飾ってきたが、南アフリカは初めて「黒星を喫した王者」となったのである。プール戦の初戦で、ニュージーランドに13対23で敗れ去っていたからだ。

 この点について問われたラッシー・エラスムスHCは、むしろあの敗北があったからこそ、チームの成長を促せた部分があると力を込めた。

「私にとって、ワールドカップで指揮を執るのは今回が初めてだった。いきなり最初にオールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)とぶつかり、どのようにプレッシャーと向き合うかという意味では、とても大きなテストだった。で、我々は酷い出来に終わった。過緊張し、お粗末なビルドアップに終始してしまったのだ。あの試合から、選手たちは多くを学んだだろう。準々決勝(日本戦)、準決勝(ウェールズ戦)でうまくプレッシャーをコントロールできたのは、あのオールブラックス戦の負けから教訓を得ていたからだ」
 チームの司令塔で、今大会を通してMVP級の働きを示したSHファフ・デクラークも同調する。「僕たちは大会前、あまり多くを期待されていなかったけど、自分たちはなにがあろうとも結果を出せると信じ切っていた」と語り、「最初の試合でニュージーランドに敗れたあと、毎週のように選手たちが成長を遂げたんだ。今日この大事なゲーム(決勝)で、それを存分に見せつけたと思うよ」と胸を張った。

 ゲームの分岐点とも言える攻守の重要局面で無類の勝負強さを発揮し、接戦の展開から一気に突き放してみせた南アフリカ。ファーストマッチの"手痛い完敗"でプレッシャーと向き合う術を体得し、試合を重ねるごとに逞しく勇躍していった。エラスムスHCは「大会を通してさらに結束を高め、揺るぎない自信を携えて戦い抜いた彼らを誇りに思う」と、選手たちへの賛辞を惜しまなかった。

取材・文●川原崇(THE DIGEST編集部)

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