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4回転アクセルに挑む羽生結弦が全日本選手権で語った本音とは?極限まで追い込み、北京五輪での成功を目指す

沢田聡子

2022.01.13

前人未到の4回転アクセルに挑む羽生。思わず「疲れたな」と吐露する場面も。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

「一昨日の段階で『アクセルが決められなかったら、もうオリンピックまで頑張るしかないのかな』って思いながらやっていました」

 12月23日、全日本選手権の公式練習で4回転アクセルに挑んだ後、羽生はそう振り返っている。2019年グランプリファイナル、2021年世界国別対抗戦の公式練習でも羽生は4回転アクセルに挑んでいるが、この時は4回転アクセルの形になるジャンプを跳んで降りており、成功に向けて前進していることを感じさせた。さらにフリー本番でも、回転不足で両足着氷ではあったものの、4回転アクセルを跳ぶ姿をはっきりとみせている。

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 今、羽生が競技を続けているのは、4回転アクセルを跳ぶためだといってもいい。全日本の時点で羽生は、完璧ではなくとも「形として4Aにはなっている」と自身が認める通りのジャンプを跳んでいる。

「本当は自分の中で『これくらいのアクセルでもいいんじゃないか』っていう思いもあります」
 
「疲れたな」と羽生が感じるのは、誰も跳んだことがない4回転アクセルへの道程が、あまりにも険しいからだ。

 今季出場を予定していたNHK杯(11月)の前に、羽生は4回転アクセルを跳んで立てるようになっていた。しかし立てるようになった数日後に、右足首を負傷する。羽生の説明によれば、フリーを通して滑る練習で、4回転アクセルに続いて4回転サルコウを跳んだ際エッジが氷にとられたのだという。怪我をした直接的な原因は4回転サルコウだが、単発のサルコウであれば問題はなく、その前に4回転アクセルを跳んでいたことが影響していると羽生は分析している。「右足関節靭帯損傷」と診断された右足首の怪我のため、羽生はNHK杯に続きロシア杯も欠場を余儀なくされ、今季初戦として迎えたのがこの全日本だった。

 右足首の負傷には平昌五輪シーズンから苦しめられてきており、「右足の捻挫に関しては知り尽くしている」と羽生は言う。加圧や超音波、低周波など様々に手を尽くして治療を施し、全日本では「右足首に不安はないか」と問われ「そうですね」と答えるまでに回復していた。
 
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