「ありがとうございました」。日本フィギュアスケート界のプリンスは、北京五輪の最後の演技後に深々と頭を下げた。

　２月10日、大会５日目を迎えた北京五輪は、フィギュアスケート男子シングルのフリースケーティング（FS）が行なわれ、17番で登場した羽生結弦は、188.06点、合計283.21点を記録した。

　２日前に行なわれたショートプログラムでは不運なアクシデントが響き８位と出遅れていた羽生。そこからの巻き返しが注目されたこの日は、「天と地と」の曲に乗せて華麗な演技を披露する。

　史上初の達成が注目された４回転アクセルは転倒しながらも、採点表上は４回転半の回転不足（アンダーローテーション）の判定。ジャンプの種類としては４回転半として扱われ、ISUの公認大会では初の認定となった。

　その後は４回転サルコーで失敗してしまったものの、本人が「一生懸命がんばりました」と語った演技後半は４回転＋３回転トゥループ、４回転トゥループ＋オイラー＋３回転サルコーのコンビネーションを綺麗に決め、会場を大いに沸かせた。
  　結局、序盤のミスが響いて４位となり、ソチ大会からの五輪３連覇は逃した。それでも４Aの認定という史上初の快挙達成には、現地メディアからも賛辞が止まない。

　中国ポータルサイト『捜狐』は「ハニュウが守ってきた王座は破られた」と速報を打ち、「去り際に北京の観客に深くお辞儀をし、氷を撫でて、敬意を示した彼には多くの人々が心を打たれている」と称賛。同じく中国メディアの『新浪体育』もギリス・グラフストローム（スウェーデン）以来、94年ぶりとなる五輪３連覇を逃した点について「残念だった」とレポートしたうえで、次のように羽生を称えた。

「３連覇はできなかったが、ハニュウはここまでに独自の時代を築き上げてきた。彼のフィギュアスケート界にもたらした影響力は比類のなきものだ。この王座からの陥落は、新たな時代の始まりかもしれない」

　演技後に声を震わせながら、「明らかに前の大会よりもいいアクセルを飛んでいましたし、もうちょっとだったなと思う気持ちももちろんあるんですけど、でもあれが僕のすべてかなって」と語った羽生。彼がこの先、どのようなキャリアを歩むのか注目だ。

構成●THE DIGEST編集部

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