ロシアが生んだ最高傑作が揺れている。北京五輪に参戦しているロシアオリンピック委員会（ROC）のフィギュアスケーターのカミラ・ワリエワにドーピング疑惑が浮上しているのだ。

　２月11日、国際独立検査機関（ITA）は、2021年12月のロシア選手権で採取したワリエワの検体から、ドーピング防止規定の禁止リストに基づくホルモンおよび代謝調整物質であるトリメタジジンが検出されたと報告。

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　これはロシアのアンチ・ドーピング機関（RUSADA）が検出した検体を、世界ドーピング防止機構（WADA）が分析したもので、８日にRUSADAはワリエワ本人に選手資格の暫定的な停止を言い渡した。しかし、北京五輪参戦中の選手側から異議申し立てがあり、翌９日に処分は解除。五輪への継続出場が可能となっている。

　ITAは、ここまで事実を公表しなかった理由について、「ワリエワが16歳未満の保護対象のため実名公表を控えるのが原則だ」としている。

　今後の五輪出場に関してロシアと選手側は「何の問題もない」と主張。当のワリエワも２月15日にショートプログラム（SP）がはじまる個人戦に向け、11日にも公式練習を行なっている。

　無論、出場プロセスの不可解さから、国際オリンピック委員会（IOC）とWADAは、ワリエワの資格停止処分の解除決定を不服とし、スポーツ仲裁裁判所（CAS）に提訴する予定だとしている。それだけに今後も大会期間中に何らかの動きが起こる可能性は小さくない。

　まさに予断を許さない状況だ。そんななかで、ロシア国内ではフィギュア界が誇る15歳の神童を擁護する声も上がっている。
  　現地時間２月10日に「ワリエワはかわいそうな女の子だ」と主張した母国メディア『Champ Iona』は、ワリエワを2018年から指導している名コーチのエテリ・トゥトベリーゼが３年前のインタビューで「メルドニウムを使用できる期限は現役の時から知っていた。アスリートの回復には、やはりビタミンが必要だから」と語った内容を紹介したうえで、こう論じた。

「少なくともコーチやドクターたちには知識があった。しかし、15歳の彼女は、それがどういう働きがあるのかなどをおそらく理解していない。言葉さえ知らないはず。つまり周りにいる大人に責任がある」

　そのうえで、「ワリエワが４回転ジャンプを習得するためには、果てしない努力と勇気が必要だった」と記した同メディアは、こう続けている。

「どんなにドーピングをしても、本人の努力なしではここまでやってきたことは、きっと成し遂げられなかったはずだ。彼女が巻き込まれた今回の件が事実なら恥ずべきことであり、責任を問われる大人たちは永久にスポーツから追放すべきだ。彼らが彼女に故意にしたことは非人間的だ」

「ワリエワはこのスキャンダルによって、劇的にキャリアは変わるだろう。たとえ奇跡的に無罪放免になったとしても、フィギュアスケーターとしての評判を回復するのは非常に困難だ。彼女は間違った人々を信頼し、その代償を払った。そして残酷な政治ゲームの駒となった。15歳の少女は、オリンピックの罪意識のない犠牲者と言える」

　15日のSPの出場も危ぶまれているワリエワ。ロシアの天才が窮地に立たされている。

構成●THE DIGEST編集部

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