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「不正行為のレッテルを貼るべきではない」米大学No1となった女子トランスジェンダー選手を五輪銀メダリストは擁護!

THE DIGEST編集部

2022.03.23

全米大学選手権の500ヤードでタイトルを獲ったトランスジェンダー選手を巡り、議論が巻き起こっている。(C)Getty Images

 現地時間3月17日に行なわれた全米大学選手権の女子500ヤード(約457メートル)自由形決勝を制したリア・トーマスが小さくない話題となっている。

 2020年まで男性として競技を続けていたトーマスだが、1年以上ホルモン治療の末に女性に性転換。その後、昨秋から競技に復帰した彼女はアイビーリーグ選手権では200ヤード(約183メートル)自由形で大会新記録を打ち立てるなど、快進撃を続けてきた。

 そして今回、米国の大学生ナンバーワンを決めるレースにペンシルベニア大学の代表として出場すると、東京五輪1500メートル銀メダルのエリカ・サリバンや、同五輪400メートル個人メドレー銀メダルのエマ・ワイアントら国内代表するスイマーたちにも引けを取らないら泳ぎを見せた。

 前半こそサリバンにリードを許していたトーマスだが、レース中盤に逆転。そしてワイアントと熾烈なトップ争いを繰り広げた後半も勢いは衰えずに、4分33秒24で優勝を飾った。

 ただ、オリンピアンにも競り勝った彼女のもとには、同競技会に出場する女子選手をはじめ、世界各国から非難の声も届いている。一方で擁護する意見もある。レースで3位に終わったサリバンは、「トランスジェンダーのアスリートを含めて皆がありのままの姿を尊重し合い、仲間になるべきだ」と、米国老舗週刊誌『Newsweek』にコラムを寄稿した。

 かねてより同性愛を公表していたオリンピアンは、「私自身、競泳をとおして多くのことを学びました。トランスジェンダー選手もこの機会から排除されるべきではない」と訴え、こう続けた。
 
「他の選手と同様にリアも今の成績を収めるために一生懸命トレーニングを重ね、目の前にあるルールとガイドラインに従ってきた。皆と同じでリアも常に勝てるわけではない。だから勝利したときは他の人と同じように、努力の成果は称えられるべきであり、アイデンティティを理由に不正行為者のレッテルを貼るべきではない」

 さらに女性のスポーツを守るためにトランスジェンダーである彼女を否定する意見にサリバンは、「女性スポーツの本当の脅威は、性的虐待やハラスメント、不平等な給与や資金、女性指導者の欠如」と主張。そのうえで「トランスジェンダーが差別から守られて、本来の自分らしさを発揮できるようになれば、女子スポーツは発展する」と未来図を描いた。

 トーマスの参戦を巡ってはしばらく議論が続きそうだが、果たして誰もが納得できる解決案は出てくるだろうか。スポーツ界でも多様性を認め合うことが急務であると言えそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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