格闘技・プロレス

「こんな試合じゃ勝てない」――。RISE卒業、そして“親子喧嘩”を終えた那須川天心が語った武尊戦への危機感

橋本宗洋

2022.04.05

風音と真っ向から打ち合った那須川。焦りも見られたチャンプは何を考えて試合に臨んでいたのだろうか。写真:徳原隆元

 ホームリングで迎えた最後の闘いは"親子喧嘩"だった。

 4月2日、RISEのビッグマッチである国立代々木競技場第一体育館大会。そのメインに出場したのは那須川天心だ。ボクシング転向が決まっている彼にとっては、RISE卒業マッチだった。
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 RISEは那須川がプロデビューした場所であり、いわばホームだ。その最初の試合は2014年7月の『RISE100』大田区総合体育館大会。デビュー戦から100回記念のビッグマッチに抜擢された事実が、今も揺るがぬ彼に対する期待の高さを物語った。

 対戦した有松朝はバンタム級のランカー。あらゆる意味で破格のデビューだ。しかもこの試合、那須川は1ラウンドKO勝利を収めている。タイトル獲得は翌年5月。キャリアわずか6戦目で達成した。

 複数の団体が組んで立ち上げた『BLAE』のトーナメントで優勝、ヒジ打ちありの『KNOCK OUT』では現役ムエタイ王者を倒し、さらにRIZINではMMAにも挑戦。那須川はファンを驚かせ、喜ばせ続けた。そんなキャリアの中心軸がRISEだったと言えるだろう。

 世界トーナメント優勝に加え、ここ数年はコロナ禍にあって、志朗、鈴木真彦といったシビアな日本人の挑戦をはね返し続けた。適正体重の55キロである那須川の"本質"が見られる舞台はRISEだった。

 そんなRISEでの最後の試合で迎え撃ったのは、風音だ。昨年に強豪を次々と下す番狂わせの連続で53キロのトーナメントで優勝した23歳の若武者である。

 そのトーナメントの表彰式で、風音は那須川に対戦を求めた。自分のほうが階級は下、しかも同じジムの所属。やりづらさはあったが、「世界一強い男と闘いたい」という気持ちが抑えきれなかったのだ。

 熱い思いを那須川も受け止め、RISEラストマッチでの対戦が決した。風音のセコンドには、ジムの会長で那須川の父、那須川弘幸氏がついた。幼少期から練習、自分を知り尽くしている父が"敵側"につく――。風音の成長だけでなく、この親子喧嘩という要素も、ラストマッチには重要だった。

 実際、試合は大苦戦となった。那須川はいつものような柔らかい動きを欠いた。逆に風音は積極果敢に動き、痛烈な攻撃をヒットする場面もあった。決定的な場面こそなかったものの、大善戦だと言える。3ラウンドを終えての判定は2-0。那須川が勝つには勝ったが、むしろ、株を上げたのは風音だったのではないかと思える試合だった。
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親子で追い求める“理想の那須川天心”