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格闘技・プロレス

「世紀の決戦」で爆発した7年分の思い――。那須川天心が口にした武尊との“同じ孤独”「お互い寂しかったんだ」

橋本宗洋

2022.06.21

因縁の武尊戦に蹴りをつけた那須川。日本格闘技史に残るファイトとなったことは間違いないだろう。(C)THE MATCH 2022

因縁の武尊戦に蹴りをつけた那須川。日本格闘技史に残るファイトとなったことは間違いないだろう。(C)THE MATCH 2022

 泣いた。号泣だった。

【動画】まさに「静」と「動」。大一番を直前にした那須川天心と武尊のフェイスオフシーンをチェック

 6月19日、東京ドームで開催された『THE MATCH 2022』。チケットは即完売、観衆は5万6399人と発表された。入場料収入は20億円、PPV購入件数も50万以上だったという。記録的な数字だ。

 そんな最高の舞台を作り上げたのは、那須川天心と武尊だった。ともに立ち技格闘技最高峰の選手。どちらが勝ってもおかしくないからこそ、誰もがこの試合を見たがった。

 試合は那須川の判定勝利となった。1ラウンド、見事なタイミングで左フックを決めダウンを奪う。その後もジャブを中心に多彩な攻撃、スピードとテクニックで武尊の爆発力を封じ切った。

「針の穴を通す」

 武尊に攻撃を当てる感覚を、那須川はそう表現している。少しでも隙があればやられる。そんな危機感が常にあったのだろう。

 最終3ラウンド、武尊は強引に打ち合いを挑んできた。それが彼の真骨頂だ。攻撃をもらっても笑って前に出る。プレッシャー、つまり圧力という点ではこれまで闘った相手の中でも武尊が一番だったと那須川。しかし、相手の強さを徹底的に研究し、大きく見てもいた。

「笑った時にはこのパンチ、この動きという癖も研究してました」
 
 持ち味をきっちり出しての勝利。判定を読み上げられている最中から、那須川は泣き出した。自分でもよく分からない感情だったようだ。それでも一夜明け会見では、こう振り返った。

「拳で語るというか。2人にしか分からないことというのもあるので。そういう気持ちが全部出た、爆発したんじゃないかなと」

 那須川が武尊に対戦要求したのは、2015年のことだ。最初はK-1での対戦、K-1との契約を求められた。RISEを背負う那須川には、到底無理な話だった。それでもRISEの伊藤隆代表は、那須川に「そのつもりがあるならK-1に行ってもいい」と伝えたそうだ。那須川はその言葉を聞いて「絶対RISEはやめない」と誓った。

 K-1と武尊は「逃げた」と批判された。SNSでは誹謗中傷を浴びせられもした。だがもちろん、武尊は闘いたかった。挑発合戦にならないよう沈黙を保ち、対戦の機運がなくなりかけたところで「みんなが見たい試合を実現させる」と公言。そのために動き、RIZINの会場に足を運んで那須川の試合を見守った。

 それに那須川も呼応する。

「僕から始めた物語なので。僕が終わらせます」
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